【感想】ユダヤの商法(藤田 田)<43冊目>

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基本情報

【書籍情報】

書名ユダヤの商法
著者藤田 田
出版社ベストセラーズ
発売日2019年4月12日(初版1972年)
価格1,870円(税込)
頁数259ページ

【目次】

Part Ⅰ これがユダヤ商法だ
Part Ⅱ 私自身のユダヤ商法
Part Ⅲ ユダヤ商法のバックボーン
Part Ⅳ 銀座のユダヤ人語録
Part Ⅴ 「円」を吸うユダヤ商法
Part Ⅵ ユダヤ商法とハンバーガー
お金の欲しい人が読んで下さい―あとがきにかえて―

おすすめのポイント

【おすすめ度】
★★★(5/5)

良かった点

1.読めば商売で儲けてやろうというモチベーションが爆上がり!
2.ユダヤ式金儲けの法則実践集!
3.藤田田さん(以下「田さん」)の文章が普通に面白い!
4.合理的なところは合理的
5.ユダヤを語っていても田さんは愛国心の塊のような男

気になった点

1.本当にユダヤ人ってこんな人ばっかりなの?と思える誇張が多い気がする
2.痛烈なギャグが多すぎてどこまで本気で言ってるのかよく分からない

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感想

良かった点

1.読めば商売で儲けてやろうというモチベーションが爆上がり!

とにかく全編にわたってエネルギッシュな口調で書かれているので儲けてやろうというモチベーションが沸き上がります

帯に孫正義さんや柳井正さんが貪り読んだとあるのは事実でしょうね。
それくらいエネルギーに満ち溢れている。

若き日の孫正義さんはこの『ユダヤの商法』に感銘を受けて、高校生の立場でありながら田さんに直接面談を申し込んで実現させています。
そこで田さんから「これからの時代はコンピュータをやれ!」というアドバイスを受けて何で起業するかを決めたというのは有名な話です。
孫さんはなんと『ユダヤの商法』を一日に5回も読むこともあったとか。

田さんは戦前の1926年生まれであり、ちょうど大学生のころに戦後の厳しい日本を生き抜いてきました。
大学生時代にGHQでユダヤ人に出会い、商売の方法を学んだなどの痛快な話が書かれています。

戦後の昭和という、日本全体がエネルギーのある時代に商売のトップを走ってきた方だけあって言葉が生き生きしています。

金儲けのできん奴はアホで低能や

169ページ

お前らもっと稼がんかい!
と尻を叩かれているような感じになりました。

2.ユダヤ式金儲けの法則実践集!

本書は田さんの自伝ではありませんが、田さん自身の経験が多く書かれています。

各項目の話には大半に田さんの実体験が語られている。

したがって、本書は全く机上の書ではありません。
金儲けの実践集です。

決して体系的にまとまっているわけではないので読みやすくはなかったです。

しかし、各項目1~10ページ程度で金儲けのための生々しい法則が実体験とともに連打されるので、内容は濃密です。
印象的だったものを列挙すると、

女を狙え(34ページ)
口を狙え(36ページ)
税金分だけ余分に儲けろ(63ページ)
不意の客は泥棒と思え(68ページ)
大損しても納期はまもれ(87ページ)
厚利多売商法で儲けろ(113ページ)
商人はまず売れ(206ページ)

など、まさにユダヤ式儲けの極意の無呼吸連打です。

これに実体験がセットですからね。
孫さんや柳井さんのように影響を受けない方が無理でしょう。

3.藤田田さん(以下「田さん」)の文章が普通に面白い!

おそらくエンターテイメントとして書かれた本でもあるのだと思います。
とにかく文章が面白い。

ボインは赤ちゃんのためにあるんやでェ

151ページ

とか下ネタ的なこともおかまいなしです。

田さんは東京大学出身ですが、大阪生まれのバリバリの関西人です。

お笑いの本拠地出身だけあってユーモアの心も忘れていない。

読んでみると分かるんですけど、本から受ける印象に反して情報量は多いです。
けっこう読むのに時間がかかる。

けど読んでて飽きることはなかったです。

田さんの語り口にエネルギーとユーモアがあるため、本の世界に引き込まれる感じですね。
エンターテイメントとして読んでも楽しめると思いました。

4.合理的なところは合理的

破天荒な記述ばかりの印象ですし、実際に過激な表現が多いです。
しかし、冷静なところはやけに冷静な本だと思いました。

私が印象に残ったのは次の2点ですね。

日本には『早寝早起き早メシ早グソは三文の得』という諺があるが、わずか三文を儲けるために、早メシ早グソをしなけりゃならないとはなんたる貧乏性。これこそ、日本人の貧困さを端的に言い現した言葉といえよう。私の大きらいな言葉である。

122ページ

これはユダヤ人が食事をゆっくり楽しむという話についてのものです。

確かに日本では「仕事のできる人はご飯を食べるのが早い」ということがよく言われます。
実際に、日本電産の永森重信社長は創業初期に人を雇う時に、弁当を食べる速さで採用したそうです。

しかしですね、どう考えても早メシは体に悪いんですよ。
よく噛んでゆっくり食べた方が健康にいい。

私も早メシは悪習だと思っているので時間をかけて食べています。
食べる量を少なくして早く食べ終わるようにするのはありだとは思います。

早メシは悪、と言ってくれる人がいなかったので田さんと同じ考えなのはうれしかったですね。

もう一つはこれ。

休息は必ずとれ

148ページ

これも起業家は休まず働け、みたいなことがXなんかでもよくポストされます。
けど、休まないと必ず反動で健康を損なうことになる。

病気にでもなれば、無理して働いた分なんて簡単に吹き飛びます。

田さんは決して勢いだけの猪武者ではありません。
猪突猛進なだけの人間は東大になんて受かりませんからね。

剛と柔のバランスのよい知恵が学べると思いました。

5.ユダヤを語っていても田さんは愛国心の塊のような男

私が本書『ユダヤの商法』を★5として高評価した最大の理由はこれです。
田さんは紛れもなく愛国者なわけです。

というのも、私が読んだユダヤの本に『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』という本があります。
リベ大の両学長がYouTubeで紹介しているタルムードの小話の元ネタになった本です。

この本、決して悪い本ではないんですが各エピソードでユダヤと日本を比較して日本を悪く言うような文章が延々続く。
著者の石角完爾さんは本書『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』の中で、

故あって改宗し、日本人からユダヤ人になった

『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』15ページ

「ユダヤ人」というのがどこの国籍の人を指しているのかわかりませんが、石角さんは日本に住んでるわけでもないようです。
つまり、現在は日本人ではないということです。

だからこそ日本を悪く言うのは、こちらとしても不快に感じるんですよ。
実際に、Amazonの『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』のレビューには「日本批判がうっとうしい」というものが複数あります。

この『ユダヤの商法』もユダヤ人と日本人を比較して日本叩きしているところはあります。

「また、このタイプの日本批判本かぁ」と思ったんです。最初は。

しかし、田さんはまぎれもなく日本人であり、日本愛に満ちた愛国者でした。

1971年のニクソン・ショックの時の話です。
ちょっと長いけど引用します。

 私は、ユダヤ人の友人たちからも、外国銀行筋からも、ドルを売るようにすすめられた。そんなアドバイスを待つまでもなく、ドルを売れば絶対に儲かることは百も承知だ。輸出部を縮小した時点で売りに出ることもできた。私は、ドルを売って儲けることのできる、唯一の日本人だったと自負している。それだけに、私にはドルを売って儲けるということはできなかった。私がドルを売れば私は儲かるが日本国民は損をする。私は日本から儲けようとは思わない。ユダヤ人から儲けるのが私の主義である。
 私は、儲け話にも耳をふさいだ。そして、じっと、損をしないことに徹したのだ。私は『銀座のユダヤ人』であるが、二〇〇〇年間、帰るべき祖国を持っていた男である。祖国から奪うことは、私は出来なかった。

『ユダヤの商法』213ページ

日本批判も多い本なので「田さんは日本嫌いなのかな」と思ったのですがそうではなかった。
彼の日本批判は愛の鞭のようなものなんです。多分。

田さんと同じように愛国心で動いた昭和の相場師に銀さんこと是川銀蔵さんがいます。
彼の自伝もエネルギッシュでためになり面白い。

日本人の大先輩が日本人のために著した本なわけです。
実際に孫正義さんや柳井正さんだって奮起したわけですからね。

自分もこの本読んで頑張ろうと思いましたよ。

気になった点

1.本当にユダヤ人ってこんな人ばっかりなの?と思える誇張が多い気がする

本書にはよく「ユダヤ人は~」という表現が出てくる。
はっきり言ってこれがちょっと嘘っぽい。

ユダヤ人は、必ず鞄の中に対数計算尺を持っている。

23ページ

ユダヤ人は文字通り「時は金なり」と考えている。一日八時間の勤務時間を、彼らは常に「一秒いくら」で仕事をしているつもりでいる。タイピストにしても、退社時間がくると、残り10文字打てば書類が片づくと分かっていても、ピタリと仕事をやめて帰っていく。

66ページ

「いや、あと10文字ならやれよ」と思ってしまうわけですよ。
中途半端に仕事を残す方がもやもやして嫌でしょ。

「ていうか、本当にみんな対数計算尺を鞄の中に入れてんの?」と思うでしょ。
スマホのない時代を考慮しても一体何に使うの?

本書ではユダヤ人の歴史についても真面目に書かれているのでいい加減な本ではありません。
ただ、「どう考えても誇張でしょ」と思う記述も多い。

これはユダヤ人の話に限りません。
それが次の話。

2.痛烈なギャグが多すぎてどこまで本気で言ってるのかよく分からない

とにかく本書は文章が過激です。
そしてギャグ(だと思われる記述)も多い。

どこまで本気で言ってるのかよく分からない表現も多々あります。

日本人が肉とパンとイモのハンバーガーを、これから先、一〇〇〇年ほど食べ続けるならば、日本人も、色白の金髪人間になるはずだ。私は、ハンバーガーで日本人を金髪に改造するのだ。

39ページ

さすにこれはギャグでしょう。
けど何度も出てくるんですよね、この件。

日本から東大が消滅すれば、日本も日本人も、もっと進歩するに違いない。

182ページ

これは本当に田さん自身の言葉なのかちょっと疑問ですね。
田さんは前述した通り東京大学法学部出身です。

私も東大出身だから思うんですけど、自分が世話になった母校が消滅してほしいなんて思いませんよ。

どこまでがギャグなのかもわからないし、本当に藤田田氏の言葉かどうか疑わしいものもあります。
金儲けに役立つ情報が満載なのは確かですが、売り上げを上げるためか、エンターテイメントとして書かれているように感じられるところがあります。

この点は注意する必要があるでしょう。

まとめ

本書『ユダヤの商法』は金儲けの古典です。
書かれている情報も商売の王道ともいえる原則も多いです。

エンターテイメントとしての誇張もあるようですが、真面目に書かれている部分はしっかり真面目に書かれている。

世の中にはお金を「増やす」ことについて書かれている本は多いです。
「貯金して投資信託買え」みたいな。

しかし、お金を「稼ぐ」方法について書かれている本は少ない。

本書には、人にお金を稼がせる後押しをするエネルギーがあります。
本書を読んでお金が稼げるようになったのは孫正義さんや柳井正さんといった超大物ばかりではありません。

実践知識の勉強のみならず、精神的な支えとなるお守りのような本でもあります。

自分で商売して金を稼いでやろうと思う人は、手元に置いて繰り返しよむことをおすすめします。
私は田さんの他の書籍も全部読みたくなりました。

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