基本情報
【書籍情報】
書名 | 1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 |
著者 | 伊藤 羊一 |
出版社 | SBクリエイティブ |
発売日 | 2018年3月14日 |
価格 | 1,540円(税込) |
【目次】
はじめに
序章 そもそも「伝える」ために考えておくべきこと──うまいプレゼンより、「動いてなんぼ」
第1章 STEP1 「伝える」ための基本事項
第2章 STEP2 1分で伝える──左脳が理解するロジックを作る
第3章 STEP3 相手を迷子にさせないために「スッキリ・カンタン」でいこう
第4章 STEP4 1分でその気になってもらう──右脳を刺激してイメージを想像させよう
第5章 STEP5 1分で動いてもらう
第6章 STEP6 「伝え方」のパターンを知っておこう
第7章 実践編
おすすめのポイント
ビジネスにおける発信の目的は、例外なく人を動かすこと
【おすすめ度】
★★★★☆(4/5)
1、一貫して「人を動かす」という最重要目的にフォーカスしている
2、 実践的な技術が多数紹介されている
3、わかりやすい平易な言葉で書かれている
1、著者独自の見解が強く客観性に乏しい印象がある
2、プレゼンなど話す場面を想定しているので、文章を書く場合には自分で応用する必要がある
3、平易に書かれすぎていてわかったつもりになってしまう

仕事で話したり書いたりする機会の多い人は、「人を動かす」という当たり前の目的を意識するために一読をおすすめします!


感想
『1分で話せ』の良いところ
1、一貫して「人を動かす」という最重要目的にフォーカスしている
本書の最大のポイントはこれでしょう。
なんのために話すのかという目的が明確にされているところです。
つまり、
ということです。
単に話を聞いてもらうためでも、理解してもらうためでもありません。
そう考えると、「相手を動かす」という目的に直接つながらないことは全て些末なことになるわけです。
当然のように思えるかもしれませんが、文章術の本だと、読んでもらうための書き方や、わかりやすい書き方を目指しているものは多いです。
結局なんで話を聞いてもらいたいのか、わかってもらいたいのかといえば、結果として聞き手に動いてもらいたいからに他なりません。
・営業した商品を購入してもらう
・プレゼンした企画に協力してもらう
・自分を採用してもらう
といった最終目的を意識しない発信は迫力のないものになってしまうでしょう。
最終目的を意識した発信力を身につける、ということを意識できるだけでも本書を読む価値があります。
2、 実践的な技術が多数紹介されている
本書で紹介されているメインの技術はピラミッドストラクチャーという基本的なものです。
主張に対して、根拠を3つ用意するというありふれた手法になります。


もちろんこれだけであればそこらの凡庸な本と違いがありません。
このピラミッドストラクチャーを起点にして、他にも聞き手を動かす手法について著者の持つあらゆる手法が紹介されています。
私が現場でやり続けたプレゼン稽古で得られた知見を、すべて盛り込んだのがこの本です。
239ページ
『1分で話せ』というタイトルの通り、ピラミッドストラクチャーを骨格としてシンプルに伝えることが中心になります。
冗長な話や文章は発信者と受信者の双方にとって負担になるわけです。
具体的には、
・不要な言葉を徹底的に削る
・話者の苦労を強調するようなプロセスは不要
・中学生でもわかる言葉を使う
など、言われれば大したことなく思えても実際にはほとんどの人ができていない技術を具体例を挙げてとことん説明しています。
加えて、本書は人を動かすことを目的にしているわけです。
相手の感情に訴えかける方法についても解説してくれています。
さらに本書に一貫するコンセプトとして「できることは全部やる」というものがあります。
相手が動くために、できることすべてをやりきる
36ページ
特に本書の後半においては、「1分で話す」という枠を超えて、著者独自の処世術まで解説されているのです。
売上ではなく相手のためになる提案をすることで信頼を勝ち取る方法など。
実践的な手法のオンパレードであり、平易にわかりやすく書かれています。
自分の発信の仕方を変えて目標を達成したいと切に願う人には得るものが多いでしょう。
3、わかりやすい平易な言葉で書かれている
中学生でもわかる言葉遣いを徹底しろ、と書いている通り本書自体も極めて平易な言葉で書かれています。
とにかく読みやすい!
著者の伊藤羊一さんは
といったエリート中のエリートです。
私は著者の情報を調べてから本を買うので、それなりに難しいことが書いてあると思いました。
ところが本当に中学生でも簡単に理解できるような言葉しか使われていません。
あまりにも文章が簡単すぎて本当に伊藤さん本人が書いているのか疑ったくらいです。
というか、今でもちょっと疑っています(笑)。
ゴーストライターなんじゃないの?って。
机上の勉強ではなく、真に自分の力を高めてくれる実践の書を求めている人におすすめといえるでしょう。
『1分で話せ』の注意点
1、著者独自の見解が強く客観性に乏しい印象がある
基本から裏技まで紹介されている本書ですが、著者個人の経験や見解が多く、客観性に乏しい印象を受けました。
前半の基本部分はそれほどでもないのですが、後半の処世術的な内容にその傾向が強いです。
ピラミッドストラクチャーをはじめとした基本部分は万人向けの内容だとしても、処世術的な部分については人によって合う合わないがあるでしょう。
自分にとって使えそうだと思うものを選んで実践してみることが大事だと思われます。
2、プレゼンなど話す場面を想定しているので、文章を書く場合には自分で応用する必要がある
文章を書くために本書を読む場合は注意が必要です。
書名に『1分で「話せ」』とあるように、本書はプレゼンのような話す場面が想定されています。
つまり、文章を書くことを想定しているわけではありません。
実際に本書中にも、
文章の場合には入れることは多いですが、話す時には不要です。
73ページ
といった説明もあります。
もちろん文章を書く場合にも十分応用が可能な知識ではあります。
しかし、本書中に紹介されている技術を文章に直接流用できるかは一考の余地があるでしょう。
また、処世術的な内容については文章術とはほとんど関係なくなっています。
私のように文章術の本として本書を読もうと思っている人は注意が必要です。
3、平易に書かれすぎていてわかったつもりになってしまう
とにかくわかりやすく書かれているせいで、大したことが書かれていないように錯覚してしまうところがあります。
ただし前述した通り、書かれている内容が実践できているのかを考えてみるとほとんどの人ができていないわけです。
「内容が簡単すぎる」と侮らずに、自分は実際にできているかを謙虚にチェックして身につけていく必要があるでしょう。
まとめ
本書『1分で話せ』は完全に実践の書であって、自己啓発本に多い勉強して満足するという本ではありません。
「人を動かす」という最重要目的を意識できるようになるだけでも本書を読む価値はあるでしょう。



すでにこの記事を書く時点で私も本書の技術を意識しています。
買ってよかった当たりの本ですね。

