おすすめのポイントと基本情報
【おすすめ度】
★★★★☆(4/5)
【おすすめのポイント】
認知行動療法の手法として用いられているリアプレイザルについて書かれた本です。
著者の文章が非常に読みやすく、メンタルコントロールのための有益な知識が分かりやすくまとめられています。
名著『反応しない練習』の反応の部分を詳解した書籍としてもおすすめできます。
ただし、メンタルコントロール全般について広く論じられており、リアプレイザル自体についての記述は全体の半分くらいしかないイメージです。
【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・メンタリストDaiGoさん
→年始にどれか1冊読めば、人生変わる30冊
書名:REAPPRAISAL(リアプレイザル)最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法
著者:内田 舞
出版社:実業之日本社
発売日:2023年9月29日
価格:1,980円(税込)
まえがき
第1章 課題の発見
第2章 解決の手法
第3章 レジリエンスを育てるために
第4章 メンタルヘルスが崩れたときに
第5章 揺れ動く社会と再評価
あとがき
『REAPPRAISAL』を読む目的と『反応しない練習』との関係
草薙龍瞬さんの『反応しない練習』では感情の基礎知識として、
事実 |
→
反応 |
ということを学びました。
つまり、人の感情は生じた事実に対しどのように反応するかで決まる、ということであり、この反応を変えることで、感情をコントロールできるようになるということです。
『反応しない練習』についてはレビューを書いていますので良かったら参考にしてください。
リアプレイザルという技術は、この反応の部分を変えることでメンタルをコントロールする技術そのものなのです。
したがって、本書『REAPPRAISAL』を読む目的は、
事実に対する反応の仕方を変える方法を学ぶ
→それにより、メンタルをコントロールできるようになる
ということになります。
『REAPPRAISAL』を読んだ感想
反応しない練習では、感情の発生する過程を、
事実 |
→
反応 |
として解説していました。
本書『REAPPRAISAL』では反応の部分をさらに3つに分解し、
事実 |
→
感情 |
→
考え |
→
行動 |
事実に対する考え方次第でその後の行動が変わる、としています。
例1)本書の例を引用
①事実:子供が部屋を片付けない
②感情:怒り
③考え:子供は親である自分に敬意を持っていない
④行動:怒鳴りつける
ここで、リアプレイザル、書籍中では再評価と表現されることが多い、の出番です。
事実・感情・考え・行動の中で再評価すべきは考え、ということになります。
考えを変えることにより、後の行動(感情の鎮静・向上も)を変えることになります。
例2)再評価
①事実:子供が部屋を片付けない
②感情:怒り
③考え:子供は遊びが楽しくて夢中になっているだけで、自分に敬意を持っていないわけではない
④行動:子供と一緒に競争しながら部屋を楽しく片付ける(感情も改善)
考え方を変えることで行動を建設的なものに変化させることがリアプレイザルの基本的な流れになります。
もちろん感情も改善されるでしょう。
本書では前半でリアプレイザルの知識を著者の経験を踏まえて解説してくれており、本書の核と言っていいでしょう。
もっとも、本書は単にリアプレイザルだけを解説しているわけではありません。
リアプレイザルは認知行動療法の一環であるため、リアプレイザルに関係のある知識についても分かりやすく説明されています。
一例を挙げると、人に考え方に悪影響を与える認知の歪みの種類を名称を付して箇条書きで解説しています。
著者が言うには、負の概念はその名称を知るだけでも対処がしやすくなるそうです。
認知の歪みに限らず、本書では様々な概念の名称から解説してくれているため、曖昧だった自分の感情を言葉で正確に整理できるようになるという効果もあるでしょう。
とはいえ、決して難しい文章で書かれているわけではありません。
医師であり、科学者であり、そして指導者でもある著者らしく、合理的で論理的な文章が大変分かりやすい印象がありました。
それでいて、女性でありながらアメリカで医師になり、さらに3児の母というパワフルな経験をしているため著者個人のエピソードも興味深いものが多いです。
単純に読み物としても面白く、読みやすい本というのが素直な感想です。
『REAPPRAISAL』の不満点
リアプレイザルそのものの具体的な解説が少なかった、ということがあります。
言ってしまえば、リアプレイザルというのは、事実に対する考え方を変える、というだけの話になります。
事実に対する考え方を建設的なものに変えるには本書でも主張されているように練習が必要になります。
本を読んだだけでできるものでもないし、情報についても書籍一冊分もないのでしょう。
本書でリアプレイザルについて語られているのはせいぜい半分くらいといった印象です。
リアプレイザルそのものの詳細な解説を期待しているとちょっとがっかりするかもしれません。
また、リアプレイザルの限界についても素直に述べられています。
リアプレイザルについていくら習熟したところで不安や心配、怒りといった感情を無くすことはできないということです。
有益な技術だとしてもリアプレイザルに過度な期待は禁物ということでしょう。
リアプレイザルもやり方を間違えると長期的には状況が悪化しかねないということも感じました。
例えば、前述した本書で紹介されている子供の片付けの例です。
母である著者が一緒に協力しないと片づけないのであれば、今後も同様に部屋を片付けない、という事態が続くかもしれません。
どこかのタイミングで子供たちが自発的に片付けるようにしないと抜本的な解決にならないでしょう。
自分の子供ならともかく、リアル社会では迷惑行為を繰り返す身内や隣人、同僚などはいくらでもいます。
リアプレイザルで無理矢理建設的に考えても、それは単なる我慢になりかねないということです。
時には毅然とした態度で行動することも必要になります。
リアプレイザルも使い方を間違えると逆効果になる可能性がある、ということも頭に入れておく必要があるでしょう。
まとめ
素直に言ってしまえばそこまで内容の濃い本ではありませんが、有益な知識が読みやすくまとめられているので読んで損のない一冊だと思いました。
著者の文章の構成が非常に読みやすく、読んでいるだけで書き手の知性を感じられる珍しい本でもあります。
『反応しない練習』を読んだならば次に手に取る本としては最適なのではないかと思います。