基本情報
【書籍情報】
書名 | 全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術 |
原題 | Advertising Secrets of the Written Word: The Ultimate Resource on How to Write Powerful Advertising Copy from One of America’s Top Copywriters and Mail Order Entrepreneurs |
著者 | ジョセフ・シュガーマン(Joseph Sugarman) |
訳者 | 金森 重樹 |
出版社 | PHP研究所 |
発売日 | 2006年3月15日 |
価格 | 1,540円(税込) |
頁数 | 271ページ |
【目次】
監訳者まえがき
お客を爆発的に増やす実証済みのテクニック
第1部 お客を爆発的に増やす書き方、コピーライティングの秘密
・知識の秘密
・説得力という秘密
・成功の秘密
・読ませる秘密
・第一センテンスの秘密
・滑り台効果の秘密
・好奇心の種の秘密
・コンセプトの秘密
・全部読んでもらう秘密
・順序の秘密
・編集の秘密
第2部 最高の成果をもたらす44のテクニック
・反応に差がでる22のポイント
・役に立つ22の心理的トリガー
・予防と解決の秘密
・ストーリーの秘密
第3部 ポイントを検証する―具体例に学ぶ
・伝説の広告の秘密
・チャンスを逃さない秘密
・大どんでん返しの秘密
・常識はずれの広告の秘密
おすすめのポイント
第一センテンスの目的は第二センテンスを読ませることである
【おすすめ度】
★★★★★(5/5)
1.文章を読ませるための滑り台効果について学べる
2.心理的な技術が重点的に紹介されている
3.紹介されているテクニックの量は50を超える
1.具体例が少なく抽象的な説明が多い
2.紹介されているテクニックの数が多いので何度も読み返す必要がある
3.翻訳書特有の分かりにくさがある
4.電子書籍版がない

こんな人におすすめ!
・文章で稼ぎたいと思っている人は必読の一冊
滑り台効果は必修のスキルと言っていいでしょう。


感想
『10倍売る人の文章術』の良いところ
1.文章を読ませるための滑り台効果について学べる
本書では50以上の効果的なテクニックが紹介されています。
その中でも本書に特有で最も有名なのは「滑り台効果」でしょう。
滑り台効果とは、端的には次の2つのルールのことです。
【滑り台効果のルール1】
コピーの第一センテンスを読ませる。広告のあらゆる要素はそもそも、このたったひとつの目的のために存在する。
47ページ
【滑り台効果のルール2】
宣伝文の第一センテンスの唯一の目的は、読者に第二センテンスを読ませることである。
53ページ
ここからさらに、第二センテンスの目的は第三センテンスを読ませることであり、第三センテンスの目的は・・・、と続きます。
つまり、キャッチコピーを始めとするぱっと見で目立つ要素は何とかして第一センテンスを読ませることを目的としているということです。
さらに第一センテンス以下も次のセンテンスを読ませることを唯一の目的として、とにかく文章を読ませることを考えろ、ということになります。
そもそも、広告の世界には3つのNOTという有名な話があります。
これはアメリカのマーケターであるマクスウェル・ハックサイム氏の言葉になります。
まずは読んでもらわないことには次に行けません。
滑り台効果とは、あらゆる手段を尽くして広告を受け取った人に文章を読ませる技術、ということになります。
もちろん、ただ単に読んでもらうだけでは意味がありません。
文章後半では注文をしてもらうために必要な情報、価格や注文方法なども書くことにはなります。
滑り台効果の技術はブログでは必須になります。
なぜかと言うとSEOにおける上位表示の基準の一つであるコンテンツの人気度は、検索結果上のクリック率とサイト滞在時間で測定しているからです。
①クリック率
②サイト滞在時間
サイト滞在時間を伸ばすということは文章を読んでもらうというになります。
著名なブロガーで滑り台効果を知らない人はいないではないでしょうか。
2.心理的な技術が重点的に紹介されている
本書全体の特色として、心理的なテクニックに重点が置かれている、ということがあります。
書名中に「文章術」とある通り、基本的にはセールスライティングの本です。
もっともシュガーマン氏はマーケターであり、心理的なテクニックに秀でていたと思われる人物です。
本書は全体にわたって顧客心理に寄り添った解説がなされている上に、第2部の「役に立つ22の心理的トリガー」には70ページも割かれていますからね。
ちなみに、シュガーマン氏のもう一つの主著として『シュガーマンのマーケティング30の法則』があり、サブタイトルは「お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは」となっています。
3.紹介されているテクニックの量は50を超える
第2部が「最高の成果をもたらす44のテクニック」とある通り、第2部だけですでに50近いテクニックが紹介されています。
第2部は109ページから225ページであり、本書が271ページあることを考えると半分もありません。
もちろん第1部・第3部でもセールスライティングの技術が紹介されています。
前述した滑り台効果は第1部の内容です。
見た目は普通の単行本ですが、情報量はかなり多いと言えます。
シュガーマン氏は実践の人ですから、もちろん机上の論を語っているわけではありません。
この本は、私が開いたセミナーを忠実に再現したものです。
13ページ
私のセミナーは「特別」でした。何が特別かと言うと、まず、私自身が宣伝と広告文を書く実践家だという点です。
教育者でもなければ、コンサルタントでもありません。マーケティングという大きな賭けをし、給料を払わなければならない身です。現場の最前線で、自分の書くコピー、自分の下す判断が市場に受け容れられるように日々奮闘していたのです。
このセミナーは1988年の時点で3,000ドル(33万円)だったそうです。
2025年現在の相場だと軽く2倍くらいにはなりそうですね。
以前にレビューを書いた、ダン・S・ケネディ氏の『究極のセールスレター』と重なる内容も多いです。


セールスライティングの技術を学びたければ2冊とも必携必読だと思われます。
両者に共通している知識については頭に叩き込む必要があるでしょう。
『10倍売る人の文章術』の注意点
1.具体例が少なく抽象的な説明が多い
具体例自体はあるのですが、紹介されているテクニックの量に比べると少ないです。
全体的に抽象的な解説が多いような気がします。
第三部が「ポイントを検証する―具体例に学ぶ」となっており、一つの広告でまとめて複数のテクニックについて解説しています。
一応各テクニック中でもちょくちょく具体例はあるんですが、足りないです。
こまめに具体例を入れてくれた方が良かったと思います。
ダン・S・ケネディ氏の『究極のセールスレター』は各テクニックごとに具体例を挟んで解説してくれていましたからね。
2.紹介されているテクニックの数が多いので何度も読み返す必要がある
前述した通り情報量が多いので一読して身に付くというものではありません。
何度も読み込む必要があるでしょう。
3.翻訳書特有の分かりにくさがある
翻訳というよりはアメリカ特有の表現が分かりにくく感じたということです。
例えば、122ページで金のネックレスの広告の話が出てきます。
結論として以下のように書かれています。
私は本当に女性に対して無神経だったのでしょうか?広告のなかで女性をおとしめてしまったのでしょうか?ご判断はお任せします。
123ページ
何が言いたいのか分からん・・・。
アメリカ特有のジョークなのか、私に理解力がないせいなのか。
意味をはっきり全部言ってくれ、と思うような表現がちょくちょくありました。
セールスライティングの技術的な面とはあまり関係ないかもしれませんが。
4.電子書籍版がない
Kindleや楽天Koboにはないようです。
読みたければ紙の本で読むしかありません。
おすすめ度★5の理由
滑り台効果をはじめ、有益な知識の宝庫なので文句なく★5です。
セールスライティングを学ぶなら読まない理由はありません。
先に動画を紹介したウェブ職TVのなかじさんだけでなくメンタリストDaiGoさんも影響を受けているようです。
DaiGoさんについては『シュガーマンのマーケティング30の法則』の方です。
シュガーマン氏が本物であることは間違いないでしょう。
一般的なレビューに対する管理人の見解
「10倍売る文章術」を身に付けた人が書いたと思えるようなレビューはない



「10倍売る文章術」を身に付けた人が書いたと思えるようなレビューはないことを考えると役に立たないでしょ。



文章で稼げる人は自分の媒体で情報を発信すると思います。
販売サイトにレビューを投稿することはないでしょう。
文章で稼いでいる人は、ブログやnote、Xなど収益が発生する発信の媒体を自分で持っています。
Amazonや楽天などに匿名でレビューを投稿することはほとんどないでしょう。
メリットがないからです。
自分の媒体で情報を発信すればアフィリエイトなどの収益が発生します。
販売サイトのレビューの文章の質と本書の価値には直接の関係はありません。
キャッチコピーについて書かれていない



コピーライティングで最重要なキャッチコピーについて書かれていないので本書はおすすめできないのでは?



確かにキャッチコピーの技術については解説されていません。
他書で補う必要があります。
しかし、セールスライティング全般の解説が優れているので十分おすすめできる内容と思います。
コピーライティング、セールスライティング、キャッチコピーなどは多義的で人によって意味が違うところもあるので一概には言えません。
本書『10倍売る人の文章術』ではセールスライティングとコピーライティングを同一のものとして考えているのではないかと思います。
インターネットにおいては、現在はバナー系の広告はクリック率が低いため、テキスト広告が重要になっていますが、そこでものを言うのが、売るための文章術――コピーライティングの技術です。
監訳者まえがきより(5ページ)
コピーが一般に宣伝文全体のことを指すとすれば、キャッチコピーとはコピーの中でも短文の印象的なフレーズのことを言います。
・やめられない とまらない かっぱえびせん(Calbee)
・そうだ、京都行こう(JR東海)
本書『10倍売る人の文章術』ではキャッチコピーに絞った解説はほとんどありません。
セールスライティングとして広告文全体について解説したものになります。
滑り台効果など必修知識が解説されていますので、セールスライティングを学べる書籍として十分おすすめできると思います。
キャッチコピーの技術はそれだけでもかなり奥が深いので、セールスライティングの中で片手間に触れられるものではないでしょう。
キャッチコピーについては別の書籍で補う必要があります。
有名なところで言えば、ジョン・ケープルズ氏の『ザ・コピーライティング』や大橋一慶さんの『セールスコピー大全』ですかね。
SEOに対応していない



SEOライティングについては書かれていない。



その通りです。
SEOライティングはGoogleに向けた技術になるので、人を対象とするセールスライティングとは別物になります。
本書はSEOライティングについては一切書かれていません。
私はSEO検定1級を所持しています。
SEOライティングはどちらかというと人ではなくGoogleに認識してもらうための技術です。
もちろんGoogleも人が読んだときに好印象になるような観点で評価しますから、SEOライティングにおいて対人の視点が全く不要なわけではありません。
しかし、私の経験上、SEOライティングはほとんど対Googleの技術であって対人の技術ではないように思います。
シューガーマンは専ら対人の広告を作り続けてきた人なのでSEOライティングを学びたければ専門の書籍を当たるべきですね。
まとめ
50以上のテクニックが紹介されている本書『10倍売る人の文章術』ですが、最も重要なのは滑り台効果ではないかと思います。
何としてでも文章を読んでもらうことがセールスライティングの初歩ではないでしょうか。
セールスライティングの書籍と言えば真っ先に名前が挙がる本なので、セールスライティングの技術を身に付けたい人は必読必携です。
気になるのは電子書籍がないことと、本国アメリカのAmazonで新品が購入できなくなっていることです。
この手の名著は絶版になると値段が跳ね上がります。
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幸いにもダイレクト出版さんが新たに販売を開始してくれたので入手しやすくなりましたが。
気になる人は早めに購入しておいた方がいいかもしれません。

