おすすめのポイントと基本情報
【おすすめ度】
★★★★★(5/5)
【おすすめのポイント】
ストレス対策の書籍は数あれど、ストレスをエネルギーにに変える、すなわち、マイナスをプラスに変える方法が書いてある本は他にないので必読の一冊だと思う。
ただし、本書の言う「ストレス」は正確には「逆境」と言った方がしっくりくる。
また、やや文章が冗長で、重要なポイントが文中に紛れてしまっている感じがする。
以上のような不満点もあるにはあるが、本書を読むことの有用性が高すぎるので満点の評価とさせていただいた。
【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・メンタリストDaiGoさん
→最強最短のストレス解消法3選
書名:スタンフォードのストレスを力に変える教科書(だいわ文庫)
著者:ケリー・マクゴニガル
訳者:神崎 朗子
出版社:大和書房
発売日:2019年10月12日(文庫版)
価格:880円(文庫版)
Introduction
「ストレスを力に変える教科書」へようこそ
Part1 ストレスを見直す
第1章 すべては思い込み
第2章 ストレス反応を最大の味方にする
第3章 ストレスの欠如は人を不幸にする
Part2 ストレスを力に変える
第4章 向き合う
第5章 つながる
第6章 成長する
第7章 おわりに
訳者あとがき
読書ノート
本書を読む目的
①書名の通りストレスを力に変える、すなわち、ストレスを自分が成長するための原動力に変換する方法を知る【攻めの視点】。
②ストレス状態になると行動が手につかなくなることがある。このような状態を防止し、ストレス下であってもいつも通り行動できる方法を知る【守りの視点】。
③ストレスについての化学的な知識を知りたい。
例えば、ストレス下におけるコルチゾールやアドレナリンの作用など。
当然メインは①になる。
ストレスを原動力に変換できれば、強度なストレスのある生活環境はむしろ無限のエネルギー源になり得る。
とは言っても、ストレスが完全に人間にとって良いものであるとは思えない。
そこで、②③を知ることで、ストレスによるダメージを最小限に減らしたいと考えた。
著者についての印象
ケリーさんはすごく美人だ。
だからこそ心配になることがある。
それは、美人であるがゆえにタレント的な扱いを受けていて、その結果として本も売れているのではないか、ということだ。
つまり、書籍の内容がいいから本が売れているわけではないのではないか、という懸念があるということ。
本書を読み終えた今では杞憂だったとは思うが、疑念自体は完全には消えていないというのが正直な印象ではある。
というのもケリーさんの別の著書『スタンフォードの自分を変える教室』がいまいちだったので。
本書を読んだ感想
目的①について
①書名の通りストレスを力に変える、すなわち、ストレスを自分が成長するための原動力に変換する方法を知る【攻めの視点】
方法論というよりは、「ストレスは力になると考えることで、実際にそのように作用するというマインドセットを持つことが重要」ということが繰り返し述べられている。
そして、本書の肝はまさに、このマインドセットを養ってくれることにある。
単にストレスには良い面もあるんですよ、と言っているだけでは綺麗事を聞かされている感じになるが、本書では具体的な研究事例や統計数値で説明してくれているので説得力がある。
さらに、マインドセットの変換は考え方を変えるための介入実験にたった1回参加しただけでも数年にもわたって作用するそうだ。
つまり、本書を繰り返し読まなくとも一度読んで「ストレスは有用である」という考え方を持ちさえすればほぼ永続的に人生にとってプラスになるということになる。
だからこそ、ストレス過多の現代においては本書は義務教育に取り入れてもいいくらい必読の書であると感じたのである。
ただし、ストレスを力に変える具体的な方法についての記載はそこまで多くない。
抽象的な心構えについての記述が中心である印象を受けた。
決して具体的な方法が書かれていないわけではないのだ。
例えば、
・価値観に沿った日記を書く
・「価値観を忘れずに」と書かれたブレスレットを着用する
・不安を感じたときには「興奮しているしるしだ」と自分に言い聞かせる(試験やスピーチのような場面で)
といった、誰でも簡単にできそうな方法を記載してくれてはいる。
しかし、こういった具体的な方法論については本文中で強調されていないものが多く、数も少ない。
考え方を変えるという点に比重が置かれている本なので、具体的テクニックを知りたいという人には物足りないかもしれない。
この点は、鈴木祐氏の『超ストレス解消法』のようにひたすら具体的なテクニックを列挙してあるタイプの本とは対極にあるといえる。
目的②③について
②ストレス状態になると行動が手につかなくなることがある。このような状態を防止し、ストレス下であってもいつも通り行動できる方法を知る【守りの視点】。
③ストレスについての化学的な知識を知りたい。
例えば、ストレス下におけるコルチゾールやアドレナリンの作用など。
②③については本書のメインではないと思われるため、ほとんど得るものはなかった。
例えば②について、カッとなったときに自分を抑える方法や、怒りで仕事が手につかない、というのは本書の領域とは異なる。
本書で言う「ストレス」とはちょっとしたイライラではなく、逆境や悲劇といっていいような深刻さを持ったものがほとんどだ。
極端な話、その後何十年にも渡って自分の人生に影響を与えるようなレベルのストレスが対象になっているため、対処療法のような話は一切出てこないと思っていい。
また、③について、マインドセットを変える根拠として、コルチゾールやアドレナリン、オキシトシン、DHEAなどの物質名を挙げての説明がされている。
しかし、化学的な側面からの記述はほとんどなされていない。
この点については、本書のストレス情報についての網羅性に期待し過ぎたということがある。
本書はあくまで心理学者が書いたもので医学者や化学者が書いたものではないということだ。
本書の不満点について
不満点は大きく次の3点だ。
①内容がやや冗長
②「ストレス」の中でも「逆境」といえる種類のものが対象になっている。
③具体的な方法論が少ない。
①について、海外の本には多い傾向なのでしょうがないかもしれない。
具体的なエピソードが多いため、重要箇所の分量に対して読むのに時間がかかってしまうという問題はある。
②について、書名に「ストレス」とあるから普通はストレス全般について書かれた内容をイメージするだろう。
間違ってはいないにせよ、本書で紹介されているストレスは強度が強すぎる。
テロの犠牲者の話など。
一般人が日常で感じるちょっとしたストレスについてはほとんど触れられていないので、平凡なストレスについての対処法を知りたいという人には噛み合わない内容かもしれない。
ただし、「ストレスはないよりあった方が人生は良くなる」というのはあらゆるストレスについて通用する基本的な考え方なので、軽度のストレスに悩んでいたとしても本書は必ず一度は読んだ方がいいとは思う。
③については②と関連して、すぐに効果があるような即効性のあるテクニックについてはあまり紹介されていない。
マインドを変えることによって長い人生でストレスを味方にするという重厚な姿勢について書かれた本だ。
もし、短期的にストレスを緩和したいといった目的の場合は前述した『超ストレス解消法』(鈴木祐)のような書籍に当たった方がいいだろう。
まとめ
当初イメージした内容とは違って骨太な内容だったが、ストレスに対する考え方を変えることでほぼ恒久的な恩恵を受けることができるというのは衝撃的な話だった。
この事実を知ることができただけでも本書を読む価値はあるといえるので、本書は誰に対しても自信を持っておすすめできる。
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を読んだ後だと、全くストレスのない状態に危機感を感じてしまうくらいの変化はあった。
個人的には大当たりの本だったと思っている。