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【読書ノート】読書の技法(佐藤 優)

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基本情報


書籍情報

書名:読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門
著者:佐藤 優(さとう まさる)
出版社:東洋経済新報社
発売日:2012年7月27日
価格:1,650円

書籍目次

はじめに
第Ⅰ部 本はどう読むか
 第1章 多読の技法
 第2章 熟読の技法
 第3章 速読の技法
 第4章 読書ノートの作り方
第Ⅱ部 何を読めばいいか
 第5章 教科書と学習参考書を使いこなす
 第6章 小説や漫画の読み方
第Ⅲ部 本はいつ、どこで読むか
 第7章 時間を圧縮する技法
おわりに
[特別付録]本書に登場する書籍リスト

読書ノート

本書を読む目的

①限られた時間内で効率よく大量に読書をするための技術を学ぶ
②読書における基礎教養の重要性とその習得の仕方を知る
③読書ノートの書き方を学ぶ

①については当然のことで、同じ時間内により多くの本を読みたいという願望は読書家なら誰でも抱くと思う。
時間には限りがあるので、より大量に読書することによって、そこから得た知識をより多く活用していきたいということだ。

②については本書の独自性のように思う。
著者は読書において高校時代に学ぶ各教科の基礎知識を重要視しており、その習得方法について具体的な書籍名を挙げて丁寧に解説してくれている。

私も、経済や金融関係の書籍を読んでいて世界史や日本史の基礎知識の欠如を痛切に感じているので、そのような知識の習得方法を知りたいと考えた。

③について、始めてからまだ日は浅いが単に読書をするよりもノートを取りながら読んだ方が頭に入るように感じられる。
佐藤氏も読書ノートを書くことを本書の中で奨励している。

そこで、我流ではなく、理想的な読書ノートの取り方の参考にしたいと思った。

著者について

まず最初に私の佐藤氏に対する印象はあまり良くなかったことを断っておく。
理由は、佐藤氏のロシア愛ともいえる思想だ。

個人の好き嫌いに意見する気はないのだが、現在の日本とロシアの関係のみならず、国際情勢を考慮するとさすがに氏のロシア寄りの姿勢を擁護する日本人は少ないのではないだろうか。

しかも、ロシアに対する氏の知見は事実としても的確でないように思える。

佐藤氏は鈴木宗男氏との共著である『最後の停戦論』において、「アメリカに管理されたこの戦争でウクライナが勝利する可能性はないと見ていいーー。」と述べている。
これは書籍を読まずとも『最後の停戦論』のAmazonのページで確認できる。

この手の「ロシアは大国であり負けるはずがない」とか「ウクライナ優勢の情報は西側のみの誤った情報だ」という意見は散見される。

しかし、国際政治に詳しくなくとも連日のSNSやYouTubeなどの具体的な情報を見れば戦場ではどう考えてもウクライナが優勢なのだ。
なにせロシアサイドからも自分たちが不利であるという情報が発信されている。
おまけに、政治経済においてもルーブルの暴落などロシアに余裕があるとはとても思えない。

何か事情があるのかもしれないが、ロシア情勢という重要な問題について疑問符のつく意見を堂々と発表しているところを見ると、佐藤氏の知性を信じていいのか不安になるのである。

では、なぜ本書『読書の技法』を読むことにしたのかというと、メンタリストDaiGoさんが絶賛していたことによるところが大きい。

実は読書術の本というのは、怪しげな速読本を除くとまともなものがあまりないのだ。
正直に言えば、他に選択肢が無かったので仕方なく目を通すことにした、ということなのである。

ただし、通読した今思うのは、本書で紹介されている知識を自分で取捨選択して血肉にするのであれば間違いなく良書であるということだ。

通読してみると、佐藤氏についての印象も大きく変わった。

確かに氏のロシア寄りの姿勢には共感できないが、人としての佐藤氏については好感を持つことができた。

本書を読んで一番感動したのは以下の部分だ。

出世するうえで重要なのは、自分の生活習慣から他人に嫌われるような要因を少しでも除去することである。そのためには自分がやられて嫌なことを他者に対してしないということが基本だ。

引用元:『読書の技法』64p

読書の方法とは何の関係もないのだが、氏の良識が現れている。
人として当たり前のことのように思えても実際にできている人は少ないものだ。

他にも、読者目線に立つ姿勢が随所に見られたことに加え、逆に知識人特有の傲慢な表現は一切見当たらなかった。
本書を読んでいて、相手の立場に立って考えるという氏の基本姿勢が何度も伝わってきた。

きっと見た目の雰囲気とは違って名前の通り優しい人柄なのだろう。

氏の政治思想はさておき、単純に読書術を勉強したい方には普通におすすできる著作であると思う。

本書を読んだ感想

目的①について

目的①

限られた時間内で効率よく大量に読書をするための技術を学ぶ

まず前提として、本書で対象とされている書籍のレベルは一般のビジネス書をはるかに凌駕しており難しすぎるということだ。

具体例の多くが人文科学系の専門書であるため、普通のビジネス書などの速読を考えている人にはレベルが高すぎるように感じた。

結論を言えば、自分の目的から外れる箇所については丁寧に読む必要はない、という単純な事実に行き着いただけというのが正直なところだ。

そもそも、一般人が自分の収入を上げたり、生活を改善したりというレベルの読書であれば、佐藤氏の提唱する読む本を選別するための超速読は不要に思える。

なぜなら、YouTubeやブログなどいたるところででおすすめの書籍が紹介されているため、自分で買って読んでまで選別する必要はないからだ。

ただし、以下の2点で注意が必要だ。

・時間は有限であり読める本の量には限りがあるという佐藤氏の再三の主張は非常に重要
・人文科学系の専門書などを読む際には超速読は必要になる

読書術を身に付けるのであれば、書籍の全体を丁寧に読むという姿勢からは卒業する必要がある。
この点を肝に銘じる意味でも本書で紹介されている読むべき本や読むべき箇所を絞り込む発想は大変参考になった。

また、良書の情報が簡単に手に入らない専門書については佐藤氏の提唱する超速読は必須になると思われる。
読むべき本、読むべき箇所を自分で選別せざるを得ないからだ。

つまり、本書の要諦である速読術については自身のレベルに応じて自分なりに応用することが求められる。
私個人の話をすれば、本書を読んだことを契機に不要だと判断した個所を躊躇なく読み飛ばせるようになったことは大きな収穫だった。

目的②について

目的②

読書における基礎教養の重要性とその習得の仕方を知る

本書を読んで一番参考になったのが、この基礎教養習得についての解説だ。

特に世界史や日本史の知識を身に付けることを考えていた私にとっては極めて参考になった。

佐藤氏は、基礎教養を身に付けるのであれば迷わず高校生用の参考書を使え、と断言する。
普通は氏のように難しい本を大量に読んでいると専門書を紹介したくなりそうなものなのだが。

本書の中でも、高校生用の学習参考書が具体的な書名とともに大量に紹介されており、その使用方法や実際に氏が指導した生徒の成績の推移にまで言及されていた。

私は投資のレベルを上げるために政治や経済についての書籍を読んでいるのだが、世界史や日本史をまともに学習した経験がないのでかなり苦労している。

本書の中では歴史のみならずビジネスマンに必要な数学の知識についても解説してくれている。

私のように、収入を上げるためにビジネス書を読んでいるものの基礎教養の無さに悩まされている、という人は本書の第5章だけでも目を通してみることをおすすめしたい。

とはいえ、偏微分の概念を押さえれば鳩山元首相の行動が理解できる、というのはさすがにトンデモ理論じゃないか?

目的③について

目的③

読書ノートの書き方を学ぶ

はっきり言ってこれについてはほとんど参考にならなかった。
というのも、氏のノートの取り方は、精読を必要とするような読解そのものが難解な文章を対象にしているからだ。

レーニンの読書ノートを参考にしているらしく、そのやりかたは端的に説明すると、

重要部分をノートに書き写し、コメントを加える

というもの。

これはさすがに一般のビジネス書には応用しにくいだろう。
特に書き写すという点について。

そもそもレーニンという人は本書にも説明があるように、いつも逃げ回るような生活をしていたため本を所有することができなかったという事情がある。

自分で本を所有できず、いつでも本を参照できる状態ではなかったため、持ち運べるノートに必要な箇所を書き写しておく必要があったのだろう。

もちろん、難しい文章を書き写しコメントを加えるという作業はその本を持っていていつでも参照できたとしても、効果のあるノート術だとは思う。

しかし、文章自体は平易に書かれているビジネス書程度であればポイントやページをメモで残しておけば十分と思われるので、本書で紹介されているノート術はレベルが高すぎるという印象だ。

残念ながら参考にできる人は限られていると思われる。

まとめ

本書を読んだ感想は、有用な部分も多いが自分自身で内容を吟味し選別する必要のある書籍だということだ。

これは技術的な問題だけでなく、佐藤氏の紹介する書籍の傾向についてもあてはまる。

紹介されている書籍には哲学書や神学書といったかなり専門性の高いものが多い。

また、総じて佐藤氏は権威主義と呼ばれる国に親和性の高い考えを持っている。
権威主義国家とは具体的にはロシア・中国・北朝鮮などだ。

本書が執筆された2012年であればそこまでこれらの国に忌避感を感じなかったかもしれないが、2023年現在の日本を取り巻く地政学的状況を考慮すると、素直に受け入れられない内容も散見される。

書籍の内容をそのまま鵜呑みにしてしまう人はあまりいないと思うが、自身で内容を咀嚼して判断することが苦手な人は読書技術と政治信条の双方の観点から注意を要する書籍だと思う。

逆に、必要な箇所を自分で選んで取り入れられるという人にとっては、奇をてらわず佐藤氏自身の読書歴を素直にさらけ出してくれているので大いに参考になるだろう。

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