おすすめのポイントと基本情報
【おすすめ度】
★★☆☆☆(2/5)
【おすすめのポイント】
典型的な日本の自己啓発本であり、その悪いところが出てしまっている。
つまり、著者個人だけのサンプル数1という特殊な事例が紹介されているのであって、万人に有用かどうかの再現性が乏しい、ということだ。
この点はマコなり社長も下記の動画で「一般人にはハードルが高い」と述べている。
とはいえ、自分の考えていることを紙に書き出す、という行為があらゆる場面で効果的であることに疑いはない。
メモを書く、というモチベーションを高めてくれる。
【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・マコなり社長
→【書評】「メモの魔力(前田裕二)」のメモは普通の人にはむずかしい?
書名:メモの魔力 The Magic of Memos
著者:前田 裕二
出版社:幻冬舎
発売日:2018年12月27日
価格:1,540円
序章 「メモの魔力」を持てば世界に敵はいない
第一章 メモで日常をアイデアに変える
第二章 メモで思考を深める
第三章 メモで自分を知る
第四章 メモで夢をかなえる
第五章 メモは生き方である
終章 ペンをとれ。メモをしろ。そして人生を、世界を変えよう
特別付録:自分を知るための【自己分析1000問】
巻末特別企画:SNSで募集した「人生の軸」
読書ノート
前提
『メモの魔力』のレビューの前に前提として、管理人はメモ術の決定版は赤羽雄二さんの『ゼロ秒思考』だと思っている。
A4用紙の裏紙を横にして考えていることを書き出す、というやり方は私自身も会社でしていたことであり、万人にとって有益なメモ方法だと確信している。
しかし、綴じられていない1枚紙にメモを取る、というやり方は大きな欠点がある。
それは、書き終わった紙の管理が凄まじく面倒臭いということだ。
私の場合は管理しきれずに適当にクリアファイルに突っ込まれているだけの状態になり、ほとんどゴミ同然の状態になってしまった。
細かいことを言うと、裏紙に書いたメモはカッコよくないという問題もある。
やはり高級なノートを使い倒した方がカッコいいためメモを取るモチベーションが上がる。
本書『メモの魔力』の著者である前田さんはモレスキンという綴じノートを使っている。
そこで『ゼロ秒思考』と形式面で対比されるため、本書を参考にしようとしたということが前提にある。
『メモの魔力』を読む目的
綴じノートを使ってメモを取るための客観的な情報を知る。
前述した通り、一枚紙ではなくノートを使ってメモを取ることを考えているので、そのための情報が欲しいというのが本書を読む目的だ。
逆に言えば、前田さん個人にしか通用しなさそうなメモ術についてははっきり言ってなんの興味もない。
なぜかと言えば再現性が乏しすぎるからだ。
前田さんのメモ術自体は本を読まなくてもネットで調べることができる。
モレスキンノート(方眼)の見開きを使って、
①標語
②ファクト
③抽象化
④転用
の4つのパート分けて自分の考えを整理する。
その際、4色ボールペンを用いて、情報別に色分けする。
・黒→普段使い
・青→やや重要
・赤→重要
・緑→主観的な内容
こんな特殊かつ複雑なやり方で凡人がメモ術を習慣化するのはまず無理だ。
これはマコなり社長も認めている。
そこで、私が求めたのは誰でにでも参考になりそうな客観的な情報だ。
客観的な情報とは具体的に、
・なぜ一枚紙ではなくノートを使うのか
・どんなノートを使っているのか(サイズ、厚み、値段、罫・方眼・無地など)
・なぜそのノートなのか
・いつメモを取っているのか
・メモを取る頻度はどれくらいか
・ノートを使い切る期間
・常にノートにだけでメモを取っているのか、その他のデバイスも併用しているのか
・その他のデバイスも併用しているならばそれは何か
・どのようにメモを取ることを習慣化したのか
・何をメモすることを習慣化すればいいのか
こういった情報について可能な限り、数字などを用いた客観的かつ具体的な情報ならば、凡人である読者個人にも有益ではないかと思う。
特に一枚紙ではなく敢えてノートを使う理由が書かれていればベストだ。
まあ、結論を言ってしまうとそんなことは一切書かれていないのだが。
とにかく、欲しいのは客観的な情報であり、それが本書を読もうと思った目的だ。
『メモの魔力』を読んだ感想
使用ノートについて
感想は全体的に『ゼロ秒思考』と比較することが多い。
前田さん個人の経歴にフォーカスし過ぎているため、客観的な情報は少ないように感じた。
結論として、メモ・ノート術を洗練させるための有益な情報はほとんど得られなかったと言っていい。
使用ノートについてはモレスキンのハードカバーを使用しているということだが、この情報は本を読まなくてもネットにいくらでも出回っているので知っていた。
なぜモレスキンなのかというと、
とのこと。
立って筆記することが多いからハードカバーである必要があった、というような物理的な理由なら分かるのだが、単に好きだからと言われても。
まあ、好きな文具を使った方が習慣化しやすいから、という理由もあるようで、一概に参考にならないというわけではないのだが。
『ゼロ秒思考』がA4の裏紙を使用する理由は、筆記の心理的負担を減らすため、という明確な理由があったことに比べるとどうしても適当さを感じてしまう。
前田さんは今ではオリジナルのノートを作成し販売している。
このノート、調べてみると一冊3,850円(税込)もする。
『メモの魔力』『ゼロ秒思考』ともに大量の筆記をすすめていることを考えると、一冊4,000円近くするノートは論外だ。
仮に大金持ちで何の金銭的負担がないとしても、心理的な負担は確実に上がる。
そもそも安かろうがノートのように残る媒体に筆記するというだけで裏紙に比べると心理的なハードルは上がるのだ。
前田さんがこの超豪華なノートをどれくらいの期間で使い終わるのかについては書いていない。
もし本当に四六時中メモを取っているのであれば1か月は持たないだろう。
スマホメモが主力?
前田さんはノート以外にもスマホでかなりの量のメモを取っているような記述がなされていた。
しかし、これについても特に詳細な情報もない。
一日でスマホを何スクロールしても最後までたどり着かないくらいメモをしているらしいので、メモの主力はスマホなのではないかと思われる。
そうなると、メモ術として紹介するべきはスマホの方なのではないだろうか。
『ゼロ秒思考』は基本的に考えていることの全てを紙に書き出すことを前提にしているので、A4の裏紙以外にメモを取ることを想定していない。
したがって、『ゼロ秒思考』には赤羽さんのメモ術の核心が公開されていることになる。
この点からもメモ術の一部分しか公開されていないと思われる『メモの魔力』の情報には疑義があるのだ。
メモの習慣化について
いかなる状態をもってメモが習慣化されているといえるかは難しいが、あえて本書を読むのであれば、仕事の質が明らかに向上していると実感できるレベルは必要だろう。
残念ながら本書ではメモを習慣化する有意義な方法はあまり解説されていない。
一応、185ページから「メモを習慣化するコツ」という項目で簡単な解説はなされている。
しかし、そこに書いてあるのは
といった抽象的なことしか書かれていないのであまり参考にならない。
特に『ゼロ秒思考』を先に読んでいると、裏紙に比べて筆記の心理的な負担の高いノートをどうして採用するのか、という点には具体的な説明が欲しいと思ったので残念なところだ。
また、見た目や高級感があるからといって使ってみて失敗することもある。
私の場合もかっこいいからとライフのノーブルノートを使っていた時期があるが、ページがしっかり開かない使いにくさから使用をやめてしまった。
習慣化する重要性については書かれているものの、どうすれば習慣化できるかについてはこれといった情報はなかった、というのが正直なところだ。
『メモの魔力』の不満点
サンプル数1の事例を紹介する日本の典型的な自己啓発本を読むときは注意しなければならないポイントがある。
それは、
著者の成功は本で紹介されている技術によるものなのか?
ということだ。
本書では前田さんの簡単な経歴も紹介されているが、彼は幼少期に過酷な経験を経ている。
そのため、小学生の時からお金を稼ぐために様々な方法を試みており、路上ライブでギターの弾き語りをしていたよう人なのだ。
はっきり言って金に対する執着心をはじめ、人生に対する貪欲さが常人とは全く違う。
この人が成功したのはおそらくメモが直接の要因ではないだろう。
せいぜい多く見積もってもメモの影響は1~2割程度しかないように思える。
似たような話に、ワタミの渡邉美樹氏の『夢に日付を!』がある。
これは手帳術について書かれた本だが、渡邉さんの成功の主要因は手帳などではなく、幼少期の悲痛な体験によるところが大きいと思われる。
この手の自己啓発本はカリスマ性のある人物が書いていることが売りになってしまっており、書かれている内容に再現性が乏しいという致命的な欠点がある。
つまり、自分の人生を良くしたいと思い具体的な方法を探している凡人にはあまり得るものがない、ということだ。
別に前田さん個人を揶揄するつもりなど全くない。
むしろ、彼の人生の軌跡を知ると尊敬の念さえ覚えるほどだ。
しかし、書かれてある情報が参考になったかといえばそうでもない、ということなのだ。
まとめ
本書の冒頭にはメモについて、
「魔法の杖なんてない」と言われる世知辛い社会において、メモこそが自分の人生を大きく変革した「魔法の杖」であると直感している
6ページ
と大いに期待を持たせることが書かれている。
しかし、前田さんについて知るほどに、彼の成功はメモが直接の原因ではないことが分かってしまうのだ。
もちろんメモを取る習慣を身に付けるのは極めて有益なことだろう。
問題は、そのための凡人にも真似ができる具体的で再現性の高い方法が書かれていないことだ。
本書を読むことによってメモを取ろうというモチベーションを高める効果はある。
もっとも、メモ術について書かれた本をあえて読む時点でそれなりのモチベーションはあるのだ。
そう考えると、本書『メモの魔力』をおすすめできるのは、
前田裕二氏個人に興味を持っている人
に限定されてくる、というのが忌憚のない感想になる。