基本情報
書名:新版ザ・マインドマップ(R)
著者:トニー・ブザン、バリー・ブザン
訳者:近田 美季子
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2013年2月16日
価格:2,420円
はじめに
本書の使い方
第1部 脳の無限の可能性
1章 脳の驚異
2章 ノートの「作り方」と「取り方」
3章 脳は「放射思考」する
第2部 マインドマップをかいてみよう
4章 マインドマップとは何か
5章 言葉を使ってアイディアを広げる
6章 イメージ(絵)を使ってアイディアを広げる
7章 言葉とイメージ(絵)を結び付ける
8章 マインドマップ—「脳の取扱説明書」
9章 アートとしてのマインドマップ
第3部 マインドマップ活用法—基本編
10章 マインドマップ記憶術
11章 創造的思考の鍛え方
12章 意思決定のためのマインドマップ
13章 マインドマップでノートを取る
第4部 マインドマップ活用法—応用編
14章 自己分析のためのマインドマップ
15章 マインドマップ・スケジュール術
16章 マインドマップ学習法
17章 マインドマップ会議術
18章 マインドマップ・プレゼン術
19章 マネジメントのための
第5部 マインドマップの未来
20章 ソフトウェアでかくマインドマップ
21章 光り輝く将来
謝辞
推薦の言葉 女性男爵 スーザン・グリーンフィールド博士
あとがきに代えて
訳者あとがき
索引
読書ノート
本書を読む目的
①マインドマップの理想的・効果的な書き方を知る
②PCで使うマインドマップソフトを選定する際の参考にする
③マインドマップの使用に適した場面を知る
本書を読む最大の目的は①のマインドマップの書き方を知ることだ。
最近ノートの取り方を真剣に考えており、マインドマップに行き着いた。
我流で始めてもいいのだが、毎日ノートを取っているため、最初に正しい書き方を身に付けておいた方が長期的に良いと考えたのだ。
次に、YouTubeなどで勉強していると、PCソフトでマインドマップを書いている人をよく見かける。
例えばリベ大の両学長やブロガーのヒトデさんなどだ。
マインドマップの活用をすすめているメンタリストDaiGoさんも自身のYouTube動画でスマホによるマインドマップの活用について話されている。
私個人の考えでも、マインドマップは紙に手書きするよりも、PCソフトとの相性がいい。
なぜなら、追加修正といったリライトが容易だからだ。
そこで、PCでマインドマップを作成する場合に、どのソフトを使用するとよいのかについて判断基準を知っておきたかった。
これが②の目的だ。
③として、これまで色々なノートを取ってきて、マインドマップという放射状の筆記の仕方があらゆる場面で効果的とは到底思えない。
普通に時系列筆記の方が優れている場面もあると思われる。
マインドマップが効果的な場面とそうではない場面を分けることで、ノートの取り方をより効果的にしようと考えた。
著者について
共著になっているが、基本的にはトニー・ブザン氏の単著と考えていいと思う。
私はトニー氏にあまりいい印象を持っていない。
悪い印象を持っているというわけでもないのだが。
その理由は、氏があまりにも大量の書籍を出版していることだ。
商業主義が強すぎる感じがして、本当に意味のあることが書かれているのか懐疑的になっている。
本書の中に記憶術の名著『記憶に自信のなかった私が世界記憶力選手権で8回優勝した最強のテクニック』(エクスナレッジ)の著者であるドミニク・オブライエン氏の名前が登場する。
マインドマップは記憶力の促進にも効果がある、とトニー氏が考えているからだ。
同じエクスナレッジが出版する記憶術の本『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』において、著者のジョシュア・フォア氏がトニー氏に言及する部分がある。
ジョシュア氏は、トニー氏の営業的な誇大表現には否定的であり、マインドマップの効果についても謳い文句ほどではないと考えている。
この点には私も同意できる部分がある。
さらに、本書『新版ザ・マインドマップ(R)』には神田昌典氏の名前も登場する。
本書の旧版の翻訳は神田氏が担当している。
神田氏も書籍の執筆姿勢や内容はトニー氏と共通するものがある。
かなり多くの自己啓発本を出版している、という点だ。
実は管理人は神田氏の『非常識な成功法則』(フォレスト出版)に影響を受けて神田氏がすすめているフォトリーディングの教材を購入し実践してみたことがある。
結論をいうと目に見えて分かるような効果は感じられなかった。
当時は神田氏を信じ切っており、教材については何の懐疑的な姿勢も持っていなかった。
つまり、真剣に取り組んだ結果、これといった効果を感じなかったのだ。
全く効果がなかったとも言い切れないのだが少なくとも体感では何の効果を感じなかった。
フォトリーディングについてはメンタリストDaiGoさんがYouTubeでその効果を科学論文を根拠に否定している。
私もフォトリーディングの効果についてはほぼ全面的にDaiGoさんに同意。
こういった経緯があり、トニー氏についても懐疑的なのだ。
そうはいってもトニー氏がマインドマップの考案者であり大家であることには違いない。
そこで、とりあえず一冊だけ読んでみることにして本書『新版ザ・マインドマップ(R)』を選んだわけである。
本書を読んだ感想
目的①について
マインドマップを知るにおいては決して悪い本ではない、という印象。
必要な知識がまとまっており、一読しても損はしないと思った。
マインドマップの書き方としてはけっこう具体的に書かれている。
特に形式面について触れていてくれたので、これからノート術などを洗練させていきたいと考えている人には参考になるのではないだろうか。
形式面とは以下のような内容だ
・紙はA4(以上)を横にして使う
・色を豊富に使う
・絵や記号を使う
A4用紙を使うという点についてはトニー氏のノートの実物の写真を載せてくれている。
ノート術などの書籍を読むと、この人本当に実践してるのかな?と疑問に思うことも多いので、実際に使っている写真が載っていると信用が高まる。
ちなみに私は本書を読む前から無地のA4用紙をを横にして使っているので、行き着く先はみな同じなのかな、と感じた。
無地のA4用紙を横書きにする、という使い方は『ゼロ秒思考』(ダイヤモンド社)で赤羽雄二さんも提唱している。
ただし、使う用紙の話や色・記号・絵を使うというのはマインドマップに特有というわけでもないしはっきり言ってそこまで大した内容でもない。
読書前に感じた通り、そこまで有意義な情報もなかったというのが正直なところだ。
一応、本書には実際に描かれたマインドマップが頻繁に登場する。
しかし、あまりにも力が入りすぎており、もはや絵画のようなレベルで描かれているので、これを普段使いのノートで実践するのは現実的ではないだろう。
まとめると目的①については、最低限の体裁を確認するというレベルの収穫しかなかった。
目的②について
使用場面についても極端なマインドマップ礼賛が感じられた。
トニー氏はとにかく何でもマインドマップを使うのが理想的と考えているようだ。
・講義用ノート
・読書ノート
・会議用ノート
・スケジュール帳
など
さすがにこれはちょっと極端すぎる。
そもそもノートの役割には二つある
①書くこと自体が目的
②書いた内容を見返すことが目的
①は自分の思考を吐き出して頭をすっきりさせるときに行うような場合だ。
②は勉強をして知識を定着させたり、アイデアを洗練させていく場合などの話だ。
マインドマップは放射状に筆記するということもあり、①には全く向いていない。
マインドマップが活躍するのは②のように書いたものを何度も見返し修正を繰り返す必要があるような場合なのだ。
抽象的には、本書の11章で説明があるように、創造的な思考をまとめるのに役立つのではないかと思う。
つまり、仕事の企画などをまとめる場合だ。
私としても、マインドマップはブログのトピッククラスター(ブログの記事群の構成をまとめたもの)を作成することに使うつもりだ。
結局どのような場面でマインドマップを使うかは実際に使ってみて判断していくしかないように感じる。
少なくともあらゆる場面でマインドマップを使うというのは現実的ではないだろう。
目的③について
第5部では自前のソフトであるiMindMapを中心に書かれている。
iMindMapは2019年にAyoa(アヨア?エイオア?読み方不明)として新たにリリースされているようだ。
このAyoa、あまり使っている人がいない。
おすすめのマインドマップソフトでも紹介されているのを見かけない。
悪いソフトではないと思うのだが、2023年現在では多くの無料のマインドマップソフトがリリースされている。
トニー氏の著作である以上、自身が開発に携わっているソフトを紹介するのは当然の事だろう。
そうなると、どのマインドマップを選べばいいのか、という点については参考にならなかった。
もっとも、手書き一辺倒で推してくるのかと思ったが、第5部については40ページ近くを割いてソフトを使ったマインドマップ作製について論じてくれている。
マインドマップはPCで使うのが理想的、という考え方の正しさを再確認することはできた。
まとめ
正直に言うと本書を読んだ本当の目的は、マインドマップについて最低限の知識を確認した、というアリバイ作りだ。
いきなり我流で始めるのは不安だったので、念のために確認した、という事実が欲しかった。
その意味では本書は良くまとまっていたと思う。
逆に言うと、マインドマップが何なのか分かっていて使ってみたいと思っている人は、実際にソフトなどをインストールして使ってみた方がいいだろう。
敢えて本書から書き方を学ぶ必要はないように思う。
マインドマップの書き方について本書がおすすめできるのは、マインドマップという名前くらいは聞いたことがあるがそれがなんなのか具体的には分かっていないというようなレベルの人だ。
ただし、マインドマップの使用者が増えてYouTubeでも頻繁に見かけるようになった今では、マインドマップについて全然知識を持っていないという人は少ないだろう。
開発経緯など含めマインドマップそのものに興味がある場合は読んでみてもいいかもしれない。