おすすめのポイントと基本情報
【おすすめ度】
★★☆☆☆(2/5)
【おすすめのポイント】
この本から学ぶべきことを要約すると、
目標設定段階で間違えると、その目標を達成するための努力が徒労になりかねないから、目標設定は的確に行え
ということだと思われる。
これが分かっていれば通読してもあまり得るものはないように感じた。
内容がはっきり言って分かりにくい。
図表もパッと見ただけでは理解できないものが多い。
有益な情報もあったため、読んで損したとは思わない。
しかし、おすすめしている人が多く売れている割には中身がない、というのが正直な感想。
【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・マコなり社長
→【超要約】人生で必ず読むべき本 100選
・メンタリストDaiGoさん
→質疑応答〜コロナ 後の人生設計について
書名:イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」
著者:安宅 和人(あたか かずと)
出版社:英治出版
発売日:2010年11月22日
価格:1,980円
はじめに 優れた知的生産に共通すること
序章 この本の考え方―脱「犬の道」
第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
第2章 仮説ドリブン①―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
第3章 仮説ドリブン②―ストーリーを絵コンテにする
第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう
謝辞
読書ノート
『イシューからはじめよ』を読む目的
①目的達成のための最適な課題を設定できるようになり、爆発的な成果を上げたい
②自分の行動の時間対効果を最大にしたい
一番の目的は、爆発的な成果を上げることだ。
本書の帯には、「イシューからはじめるとやるべきことは100分の1になる」とある。
課題設定が適切ならそれだけの効果が出るということなのだろう。
さすがに100分の1は言い過ぎにしても、自分の行動効率が劇的に向上することを期待した。
また、普段地道な作業をしているとかけた時間の割には成果が出ていないように感じることが多い。
イシューから始めることで自分の努力の時間対効果の上昇を感じ、徒労感や焦燥感を払拭したいと思った。
『イシューからはじめよ』を読んだ感想
とにかくよく分からない論述
結論を言ってしまうと、本書を読んだ後も要約動画などから得た情報と大差なかった。
目的①②にはほとんど寄与しなかったと言っていい。
やるべきことが100分の1になる、というのはセールスコピーにしても大げさすぎる。
とにかく文章が分かりにくい。
例えば冒頭のイシューの定義からよく分からない。
issueの定義
A)2つ以上の集団で決着のついていない問題
25p
B)根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
この定義を見た瞬間に嫌な予感がした。
はっきり言って意味が分からないからだ。
Aの「2つ以上の集団で決着のついていない」というのは要は未解決ということだろう。
また、Bの「白黒がはっきりしていない」というのも同じことだ。
そうなると、issueの定義は
A)未解決の問題
B)根本に関わる、もしくは未解決の問題
と言い直せる。
そして、そもそも未解決だから問題なのであって、「未解決」と「問題」は同語反復に思える。
そこでさらに言い直すと、
A及びB)根本に関わる問題
と言ってるだけなんじゃないの?
「2つ以上の集団で決着のついていない」と「白黒がはっきりしていない」を「未解決」と言い直すのは少し乱暴かもしれない。
それにしても、「根本に関わる」と「白黒がはっきりしていない」を並列に並べるのはおかしいだろう。
A)2つ以上の集団で決着のついていない、もしくは白黒がはっきりしていない問題
B)根本に関わる問題
とまとめる方がまだ自然だ。
著者にとって価値ある仕事、すなわちバリューのある仕事はバリューの本質で判断するらしい。
バリューの本質は「イシュー度」と「解の質」の2つの軸で成り立っているとのこと。
そして、「イシュー度」と「解の質」は前述のイシューの定義から
イシュー度
自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
解の質
そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
と導かれるらしい。
すまん、もう何を言っているのかさっぱり分からない。
ここまでの著者の論述がよく分かるという人はこの本に向いているのだろう。
さらに言ってしまうと、本の中で大量に用いられている図表の意味も分かりにくかった。
著者は本書の中でチャート(図表・グラフ)について以下のように述べている。
これ(チャート(図表・グラフ)のこと)を描くために多くの人が日々四苦八苦しているが、本当に気の毒なのは「意味のわからないチャートを見せられて四苦八苦している聞き手や読み手の人」だ。
216p
あの、本気で言ってるんですか?
なんかこれ以上は喧嘩を売っているような感じになってしまうのでやめておく。
本書の内容はとにかく分かりにくかったというのが私の本音だ。
対象となる読者層が不明
分かりにくいと言ったが、もしかすると本書はかなりハイレベルな内容なので人を選ぶのかもしれない。
経営コンサルタントが書いた本らしく、具体例は大企業の経営・企画に関連するものがほとんどだ。
したがって、一般人が自分の人生の目標を設定する、というような場面を想定していないのかもしれない。
実際に私が書店で本書を購入した時も、自己啓発コーナーではなく経営戦略のコーナーに置かれていた。
だとすれば、本書の内容をよく理解できないのは本書の性質を一般人向けのものと誤解していた私が悪いのだろう。
もっとも、仮に本書が経営の専門書であるとしても、前述のイシューの定義がよく分からないことに変わりはないし、50万部も売れていることからすると一般人向けの書籍のように思える。
それとも経営戦略に関わるような人たちが50万人も購入したのだろうか。
本書を絶賛している人たちが内容をきちんと理解しているのかは疑問なのである。
この点についてサラタメさんという人が要約動画で面白いことを言っている。
5~6年もやっていて全然ダメなら、自分ではなく本の内容を疑ってもいいのではないだろうか。
それこそイシューが間違っている可能性がある。
役に立った知識
文句ばかり言っているが本書が駄本だなどと言うつもりはない。
冒頭に示した通り、目標設定の段階で間違えるとその後の努力が徒労になる、という指摘は極めて重要だ。
他にも感銘を受けた情報として、
というものがある。
つまり、最初から高い完成度を目指すと60%から70%にするのに60%まで費やした時間の倍の時間がかかる。
それなら、60%で一旦完成として後で検証のサイクルを回した方が70%にする時間ははるかに短くて済む、ということだ。
この考え方は、例えば勉強で問題集を繰り返す場合やブログで記事を書く場合など様々な場面に応用が利く。
なんとなく経験的に分かっていても断言してもらえると行動しやすくなるのだ。
ブログであれば30点の出来でいいから記事を公開してしまえ、という人もいる。
その他にも、フェルミ推定という考え方に出会えたのも本書を読んだ成果の一つだ。
本書の内容のメインではないが興味を持ったのでフェルミ推定について勉強してみようと思っている。
「安宅」って書いて「あたか」って読むんだなぁ、なんていうのも本書を読んで初めて知った。
まとめ
全体的に否定的なことばかり言ってきたが、役に立った部分もある。
それでも総合すると、私はどちらかと言えば本書に対して否定的な立場といえるだろう。
やはり世間の評価が高いことに比べて内容が分かりにくすぎるのだ。
一応、アメリカで弁護士をしている藤森涼恵さんという方が原稿に何度も目を通してアドバイスしているらしいので、全くの独りよがりが書かれているわけではないのだろうが。
読んで損はないがおすすめできるかと言われればおすすめしない、というのが私の正直な感想になる。
同じく東大とマッキンゼー出身の赤羽雄二さんが書いた『ゼロ秒思考』が分かりやすい名著だっただけに、『イシューからはじめよ』の分かりにくさが際立つ。
『ゼロ秒思考』は分かりやす過ぎて、内容が大したことないと文句を言われているくらいだ。
もちろん『ゼロ秒思考』は内容も素晴らしく現代人必読の一冊と言っていい。
というか安宅さんは院は東大のようだが学部も東大なんだろうか?
学部の情報が一切出てこない。
こういうところに不信感がある。
学部も東大ならちゃんと書いた方がいい。
日本の学歴は学部の影響が一番大きいから参考情報としては意外と重要なのだ。
経験上、東大の学部出身者は分かりやすいことを難しく言うのが大嫌いな人が多いと思っている。
もちろん小難しいこと言うのが好きな人もいるが、その気になれば赤羽さんのように非常に分かりやすい文章が書ける。
赤羽さんは東大の工学部出身。
自分の知性に学歴からの自信があるから敢えて難しいことを言って自分を大きく見せる必要がないのだ。
そんなところからも私は『イシューからはじめよ』に懐疑的なのである。