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【読書ノート】諦める力(為末 大)

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目次

おすすめのポイントと基本情報



【おすすめ度】
★★★★☆(4/5)

【おすすめのポイント】
自分の勝てる分野で勝負することの前段階として今やっていることをやめることについて論じている。

本書は一貫して諦めることを攻めの決断と考えており悲壮感ではなく希望に満ちた論調になっている。

自分の能力やリソースを客観的かつ冷静に分析して決断を下すという野心的な試みでもあり、ブルーオーシャン戦略に近い。

また、サンクコストについても言及されているので一個人の感想ではなく科学的な視野で論じられている
読んでいて諦めること関する考察の網羅性と信頼性は高いと感じた。

人生の時間は有限である以上、諦めて次へ行くという決断は誰にとっても必要になる。
極力早いうちに身に付けておきたい考え方が紹介されているため人を選ばずにおすすめできる良書

【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・マナブさん
僕の人生を変えた本【20代で年収1億を達成/思考を作るための良書】

書籍情報

書名:諦める力
著者:為末 大(ためすえ だい)
出版社:プレジデント社(単行本)、小学館(文庫版)
発売日:2013年5月30日(単行本)、2018年10月5日(文庫版)
価格:1,650円(単行本)、770円(文庫版)

書籍目次

はじめに
第1章 諦めたくないから諦めた
第2章 やめることについて考えてみよう
第3章 現役を引退した僕が見たオリンピック
第4章 他人が決めたランキングに惑わされない
第5章 人は万能ではなく、世の中は平等ではない
第6章 自分にとっての幸福とは何か
おわりに

読書ノート

『諦める力』を読む目的

①諦めることの効果を知る。
諦めることについて技術的・戦略的な知識を得る。
③①②の結果、諦めた方がいいことを諦められるようになる。

人生の時間は有限である以上、続けても結果が出る可能性の低い取り組みは見切る必要がある。
今やっていることをやめて次へ行くための方法論を知りたい、というのが本書を読む目的である。

本書『諦める力』を読む前に、内容の似ている『QUITTING やめる力 最良の人生戦略』(ジュリア・ケラー)を読んでレビューしている。

『QUITTING』はやめることに対する罪悪感を払拭することに焦点が当てられているため、戦略的な内容についてはほとんど書かれていない。

そこで、より進んだ内容を求めて『諦める力』を読むことにした。

著者について

為末大さんは世界選手権の男子400メートルハードルの銅メダリストであり、引退後はテレビでも活躍されているため知らない人は少ないだろう。

本書『諦める力』について自身のYouTubeチャンネルでも解説されているので見ておくと理解が深まると思う。

『諦める力』を読んだ感想

目的①について

目的①

①諦めることの効果を知る。

本書における「諦める」とは一貫して積極的な攻めの思考に基づく行動だ。

諦めるというよりは勝てる分野に戦場を変更する、という方が正確だろう。
すなわち、諦めることをあくまで自分の究極的な目的を実現するための手段として考えている。

為末さんはもともと100メートル走の選手だったが、自分の身体的な限界を感じ、より上位に食い込むことができる400メートルハードルへと転向されている。

為末さんの目的は陸上競技で勝利することであり、100メートル走も400メートルハードルもその手段でしかない。
だとすれば、勝ちやすい方を選択する、というのが為末さんの決断だ。
結果は皆さんもご承知の通りだろう。

結果が出なくとも陸上競技の花形である100メートル走を頑張る、というのも一つの価値観ではある。
「勝ちやすい競技を選ぶ」という判断についてスポーツにはそぐわない打算的な考え方だ、という批判もあるかもしれない。
それでも、日本人初のスプリント種目におけるメダル獲得の瞬間を見れば為末さんの判断は英断であることが分かる。

100メートル走をそのまま続けていたらメダルを獲ることはまず不可能だっただろう。
陸上にかけた時間も有意義なものではなくなってしまっていたかもしれない。

つまり、目的①についての答えは、今やっていることを諦めることで自分のリソースをより勝率の高い領域に振り分けることができるようになる、ということである。

目的②について

目的②

諦めることについて技術的・戦略的な知識を得る。

結論を言ってしまえば、最後は自分で決めるしかない、という身も蓋もない内容になっている。

何となく分かってはいたが、結局最後は自分で決めるしかないのだ。
それを言い切ってくれているだけでも救いはある。

もっとも、自分で判断するためのヒントについては随所にちりばめられていた

まず、為末さん自身は100メートル走から400メートルハードルに転向する際に、自身の身体的能力を数値化し、競合との比較を行っている。
その結果、客観的に見て100メートル走では厳しいとの感覚を持つようになったそうだ。
他方、400メートルハードルは競合のレベルが100メートルと比べて明らかに低いとの分析も行っている。

つまり、自分自身と競合になり得る他者について数値を基にした客観的な分析を行う、というのは一つの技術となる。

他にも、決断する際の心境についても心理学の知識に触れながら分析的に記述している。

やめてはいけない ⇔ やめたくない  やめてもいい

最後は自分で決めるしかないから、と読者に投げるのではなく、可能な限り自身や同じアスリート仲間の体験から参考になる知識を言語化してくれている。

ここで紹介した以外にも決断を下すためのヒントになる考え方は多数紹介されている。

人生の重大な決断を技術的・機械的に行うことはできないが、諦めるた方がいいことを諦めるための技術や知識については納得のいく回答を示してもらえたと思っている

目的③について

目的③

③①②の結果、諦めた方がいいことを諦められるようになる。

目的③は本書の内容についてではなく私個人の私事になる。

本書を読む前と後では、今やっていることをやめて別の事をやることに積極性が出てきたように思う。
今やっていることよりもより優先度の高いものを探し、時間というリソースをより多く振り分ける、ということに対する積極性だ。
そこには以前感じていたような後ろめたさはなく、結果を出せる可能性についての高揚感もある。

もっとも、私の場合は完全にやめてしまうというよりはリソースの再配分と言った方が正しい。
これは『QUITTING』に書かれていた半やめ(セミ・クイット)に近い。

為末さんの主張そのままではないにしても、心理的に影響を受け行動に変化が出ていることは確かだ。

『諦める力』の不満点

★5つにしていない以上、不満点もある。
不満というより日本人が書いた自己啓発本の傾向の話だ。

日本人が書いた自己啓発本は客観的な考察というより著者個人の見解が書かれているケースが多い。
それに対して海外の本は大学での実験結果や統計データを基にしているケースが多く、一般人にとって再現性の高い内容になっているといえる。

本書『諦める力』も為末さんの経験をベースにしているものが多く、その他の具体例もアスリートのものが大半だ。
一般人には参考にしにくい点があるかもしれない。

また、後半に進むほど論調がエッセイのような感じになっていくのも読んでいて気になったところだ。
図表や写真による説明も皆無だ。

とはいえ、しっかり読めば参考になる知識が多く、類書が少ないことから本書の価値は高いと思っている。
上記の不満点も些細なものと言っていい。

まとめ

私個人は本書は必読の一冊だと思っている。
一度しかない人生を有意義に過ごすためにも、より価値ある領域に移動する、という発想は常に持っておいた方がいいだろう。

真面目な気質の日本人だからこそ、諦めるという選択を拒絶するばかりに、自分で自分の可能性を潰してしまっている人が多いように思える。

少し勝負する土俵をずらすだけでも人生は全く違ったものになると感じさせてくれる一冊だった。



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