【感想】目的ドリブンの思考法(望月 安迪)<48冊目>

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基本情報

【書籍情報】

書名目的ドリブンの思考法
著者望月 安迪(もちづき あんでぃ)
出版社ディスカヴァー・トゥエンティワ
発売日2022年3月25日
価格2,420円(税込)
頁数358ページ

【目次】

はじめに──〝何のために〟をめぐる物語
第1章 まず、「目的」から始めよ
第2章 「目的」をどう設定するか
第3章 目的から「目標」への落とし方、そして実行へ
第4章 成果創出の「手段」とあらゆる仕事に通底する「5つの基本動作」
第5章 〈認知〉 最小の労力で最大の成果を出す「問題の見極め方」
第6章 〈判断〉 最良の結論に最速でたどりつく「判断の方法」
第7章 〈行動〉 無駄な動きなく最高の成果を得る「アクションの導き方」
第8章 〈予測〉未来の問題を先読みし先手を打つ「リスク予測法」
第9章 〈学習〉 既知から未知を知る「学びのレバレッジ法」
終章 新たな始まりに向かうための思考〈問い〉の地図

おわりに──僕らは何のためにあるのか
謝辞

おすすめのポイント

【おすすめ度】
★★★(5/5)

良かった点

1.目標達成に必要な逆算思考が貫かれている
2.目標達成の流れがこれほど分かりやすく論理的に書かれている本は他にない!
3.戦略の核心たる手段に一番ページが割かれている
4.言葉の定義が分かりやすい
5.人名をフルネームで紹介している
6.『イシューからはじめよ』の上位互換

気になった点

1.一貫して仕事の話だけがされている
2.それなりの規模の企業で働く中間管理職が想定されてる
3.やっぱり外資系コンサルが書いているだけあって分かりにくいところがある

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感想

感想を書くにあたっての前提、あえて「目標」という言葉を使います

本書は書名に『「目的」ドリブンの思考法』とあるように目的から始まっています。

しかし、後述するように内容は一貫して組織内における仕事の話を事例としています。
実人生規模で考えると、「目的」よりも「目標」という言葉の方がしっくりくるので、あえて「目標」という言葉を使います。

・目的達成→目標達成
・目的設定→目標設定

みたいな感じで。

良かった点

1.目標達成に必要な逆算思考が貫かれている

もともと私は逆算思考の本を探していて本書『目的ドリブンの思考法』に出会いました。

そもそも目標達成には大きく2つの考え方があります。

ブレイクダウンゴールから逆算して計画を立てる方法
ボトムアップコツコツと行動を積み上げて目標を達成する方法

このうち、成功確率が高いのは圧倒的にブレイクダウン方式だと思うに至りました。
つまりどういう結果が欲しいのかをしっかり決めてから必要な行動を取るということです。

逆の考え方もあるにはあります。
私もボトムアップの方が凡人向きなんじゃないかと考えていた時期がありました。

しかし、どういう結果が欲しいのかをはっきり決めずに、現状の行為を惰性で続けるのは逃げてるところがあると思うようになったのです
期限がなければ必死さも出ませんからね。

そこで逆算思考について調べているうちに本書『目的ドリブンの思考法』に出会ったというわけです。

本書は一貫して最終目的から逆算する方法論が説かれています

目的→目標→手段

という流れです。

本書は一貫して、目的を頂点とした<目的―目標―手段>の成果創出ストーリーを描く技法を明らかにするもの

14ページ

この目的から構築していく目標達成の流れがこれほど美しく合理的に解説されている本はこれまでに見たことがありません。

2.目標達成の流れがこれほど分かりやすく論理的に書かれている本は他にない!

私が本書を読んでい一番感動したのがこれです。
目標達成における一連の流れが本書ほど分かりやすくかつ論理的に整理されている本をこれまで見たことがありません。

図で表現すると、概略は本書52ページの図の通りです。

「分かりやすく論理的に書かれている」というのは、なぜ目標達成の道のりがこの概略図のような構造になっているかについて理由が明確に書かれている、ということです。

例えば、本書ではまず「なぜ目的から始める必要があるのか」についての説明から始まります。

単純に、目指すべきゴールがなければ努力しようがない、というのはあります。
しかし、本書における目的から考える理由はさらに深いものです。

現代はいわゆるVUCAの時代だということに最大の理由があります。

Volatile:「変動的な」
Uncertain:「不確実な」時代
Complex:「複雑な」時代
Ambiguous:「曖昧な」時代

VUCAという概念自体は有名なので知っている人も多いでしょう。
要は現代は変化が速すぎて先行きが不透明だということです。

このような時代においては、過去を参照するやり方は上手くいきません。
今まではそれで良かったかもしれないけど今後も成立するかは全く分からない、ということですね。

 戦後の高度経済成長期を思い出してみよう。そこでは、「去年と同じ製品を、より効率的に、大量に生産すればいい」「それには、これまでの改善をもっと積み上げればいい」という頭の使い方で十分通用した。それどころか、その考え方が当時は最も有効でさえあった。
 しかし、時代は変わった。従来の取り組みが事業環境の変化で瞬く間に陳腐化し、過去からの懸命なる努力の継続が事業を破綻に導く悪手にさえなりかねない。

30ページ

じゃあどうすればいいのかというと、本書で引用されているリンカーンの言葉に集約されています。

では、先行きの見えない、この時代で僕らがとるべき考え方とは何か?アメリカ合衆国の新時代の幕を開いた大統領、エイブラハム・リンカーンは次の言葉を遺している。

The best way to predict the future is to create it.
未来を予測する最良の方法は、それを創り出すことにある

31ページ

不確実な時代においてはまず望む未来を描いたうえで、そのような未来を創り出すように活動していく必要があるということです。

これがまず目的から始めなければならない最大の理由になります。

本書では目的だけでなく、目的を基点とした目標や手段についても、全体の構造の中でどのような意味を持つのかということが明確に説明されています。

例えば、目標設定においては有名なSMARTの法則というものがあります。

Specific:具体的であるか
Measurable:測定可能か
Achievable:達成可能か
Relevant:目的と整合しているか
Time-bound:期限が明確か

古くは神田昌典さんの『非常識な成功法則』などでも紹介されています。

私は漠然と、「具体的な目標じゃないと達成できないよなぁ」くらいにしか思っていませんでした。
実際にこれまでの自己啓発本での説明もその程度のものです。

しかし、本書では<目的―目標―手段>の一連の戦略の中でなぜSMARTの5要素が重要なのかが解説されています。

Specific(具体的であるか)を例に挙げると、前述した概略図を見れば分かる通り、<目的―目標―手段>においては上流ほど抽象的であり下流ほど具体的です。
これは直感的にも分かることでしょう。

だとすれば、目的に対して目標は「具体的である」ことが必然的に要求されるわけです。

 まず、「①Specific 具体的であるか」。目標は、目的を実務として対処できるレベルに具体化したものだ。抽象度が高くなりがちな目的を補うはずの目標が具体的でないなら、それは目標として意味をなさない。だからこそ、目標は実務としてアクションのイメージが湧く具体的なものでなければならない。

136ページ

つまり、「実現可能性が高まるから具体的にする」ということだけではなく、目的から始まる全体戦略との関係で具体性が求められる理由を論じているわけです。

単に「目標はSMARTの法則で設定しろ」と言われるよりもはるかに説得的です。
実際にSMARTの法則だけ抜き出してきて目標設定について説明している人は多いですからね。

もちろん、他のMARTの要素についてもていねいな理由説明があります。

このように本書のいいところはあらゆる結論に対して分かりやすい理由が説明されていることです。

3.戦略の核心たる手段に一番ページが割かれている

これが本書がただの頭でっかちな本とは一番違うところです。

私は目的と目標の章(1~3章)を読んだだけでかなり感動してしまったのですが、1~3章だけでは全体の半分にも満たないです。

そうです、この本はひたすら半分以上のページを割いて手段について論じているわけです。

なぜかといえば、手段こそ<目的―目標―手段>の一連の流れの中で核心にあたる部分だからです。

目的・目標というのは言ってしまえば机上レベルの話になります。
具体的に何をすればいいのかという手段が定まって初めて戦略は意味を持ちます
手段を実行してこそ描いた目的・目標を実現させることができるということです。

だからこそ、手段を戦略の核心として説明しているということになります。

 どれほどビジョナリーな目的を設定しようとも、そこに対してどれほど的確な目標を定めようとも、実現の「手段」が伴わなければリアルな成果は生まれない。だからこそ、「手段」はピラミッドの全体を支える基盤として位置づけられる。

150ページ

全体像をピラミッド形で説明しているのも手段に基盤としての意味があるからなんですね。

本書の概略図はシンプルながらよく考えられていると思います。

抽象的な部分ではなく具体的な部分に力を入れて説明しているということは、単に机上の論を説明しているわけではないということです。

本書の著者である望月安迪さんも、本書のやり方を何度も試行錯誤して試していることが想像されます。

外資系コンサルというと抽象論に終始している感じの本が多いことを考えれば、本書は異色のタイプと言えるかもしれません。

4.言葉の定義が分かりやすい

私が本書に好印象を持った理由の一つが言葉の定義を分かりやすく正確に示しているところです。

例えば目的は、

【目的の定義1】 
新たな価値を実現するために目指す未来の到達点

33ページ

この定義を導くために3ページほど割いて解説してくれています。

これでも抽象度が高すぎるかもしれません。

分かりやすく言い換えてくれています。

【目的の定義2】 
「何のために?」という問いに対する答え

34ページ

他にも目標や手段についてもしっかり定義から入っています。

【目標の定義】 
抽象的な目的を、実行対象として具体化したもの

118ページ

【手段の定義】 
「目的」と「現状」の間にあるギャップを埋め、目指す姿の実現を可能にさせるもの

148ページ

定義を示すというのは当たり前のことのように思えますが、やってない本は意外と多いです。
言わなくても分かるでしょ、ということなのでしょう。

しかし著者と読者は別の人間ですからね。
定義を示さないと議論というのはできないものなのです。

5.人名をフルネームで紹介している

言葉を引用する際に発言した人の名前をフルネームで書いていることにも好感を持てました。
本の内容とは直接関係ありませんが。

・エイブラハム・リンカーン(31ページ)
・マハトマ・ガンディー(87ページ)
・ルネ・デカルト(126ページ)

多いですよ、有名な方だけ書いてる本は。
リンカーン、ガンディー、デカルト、みたいな。

コミュニケーションの名著『人を動かす』にある通り、人名というのは大切なものです。

だからこそ、フルネームで人の名前を覚えることは大事なわけです。
こういう細かいところに著者である望月安迪さんの人間性が現れていると思います。

6.『イシューからはじめよ』の上位互換

本書は一言で言ってしまえば、あの有名な『イシューからはじめよ』の完全な上位互換と言っていいと思います。
『イシューからはじめよ』より100倍意味のあることが100倍分かりやすく書かれています

実際に『イシューからはじめよ』をかなり意識して書いたのでしょう。

それゆえに、仕事にあたって最初に考えるべきは「イシュー」でもなければ、「仮説」でもない。

「目的から始めよ」
これが、僕らが共有すべき標語だ。
目的なくして適切なイシューは設定できない。

64ページ

全くその通りでしょう。

ここまで読んでいただければ分かると思いますが、私は『イシューからはじめよ』にはあまりいい印象を持っていません。人に勧めようとは全く思わない。

『イシューからはじめよ』については別記事にレビューを書いています。

前述した定義の話についても、『目的ドリブンの思考法』と『イシューからはじめよ』では明確に差があります。

『イシューからはじめよ』に書かれている「イシュー」の定義は次の通り。

【issueの定義】

A)2つ以上の集団で決着のついていない問題
B)根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題

『イシューからはじめよ』25p

言葉の定義を二つに分けているのは初めて見ました。

この定義の分かりにくさについては先ほどのレビュー記事にて詳細に解説しています。

このイシューの定義でイシューが分かる人っているのでしょうか?

『イシューからはじめよ』を読むのであれば『目的ドリブンの思考法』を読むことを強くお勧めします。

気になった点

1.一貫して仕事の話だけがされている

これはちょっと残念だった点です。
本書は一貫して仕事に関する話だけがされています。

つまり、一般的な目標達成の本ではないということです。

もちろん個人的な目標達成にも応用はできます。

ただちょっと機械的な感じがするんですよね。

特に仕事の中でも企業における中間管理職に限定されているようなところがある。

2.それなりの規模の企業で働く中間管理職が想定されてる

出てくる具体例がそれなりの規模の企業の中間管理職を想定したものばかりです。

これが本当に味気ない。

そもそも目標達成の本を読んで勉強しようという人が、組織の中で評価される方法を求めているということはあまりないのではないでしょうか。

特に現代は副業や独立志向が高まっていますからね。

著者の望月さんが中間管理職的な立場にいたようなのでやむを得ないかもしれません。

方法論自体はあらゆる目標達成に応用できるとは思いますが、素材のせいで読者層を限定してしまっているように感じました。

3.やっぱり外資系コンサルが書いているだけあって分かりにくいところがある

目的・目標までは本当に分かりやすくて感動しました。

しかし、やはり外資系コンサルが書いた本だけあって難しい部分もあります。

正直に言って、手段の5つの型の話、具体的には第5章以降はかなり難しいです。

気合を入れて何度も読み返さないと理解しきれないのではないでしょうか。

まとめ

私はもともと逆算思考を身に付けたくて本書を読み始めましたが、結果的には目標設定・達成の本として参考になりました。

これまでも目標設定・達成の本はかなり読んできましたが、本書ほど体系的に分かりやすく書かれた本は見たことがありません。

間違いなく現状出版されている目標設定・達成の本の中で最も効果的な手法が紹介されている本だと思います。

残念ながら明らかに内容の劣る『イシューからはじめよ』よりも売れていません。

内容がいい本が売れるわけではないというのは悲しいものがあります。

しかしだからこそ、人に差をつけるチャンスだとも思います。

自分の願望を成就するためにどのような計画を立てればいいのか知りたい人には本書を強くお勧めします。

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