おすすめのポイントと基本情報
【おすすめ度】
★★★★★(5/5)
【おすすめのポイント】
自分を変えるための最も確実で効果的な方法が紹介されている。
その方法とは、身に付けようとしている習慣をばかばかしいほど小さくする、というもの。
本書は一貫して小さい習慣がなぜ最重要であるかを多角的に解説している。
方法を並列に列挙する他の習慣本とは違う。
習慣を小さくするという方法をメインとして、他の方法をその補助と位置付けている。
これならできる、と思えることに加え、実際に本書を読み終わった直後、いや、本書を読んでいる途中からでさえ始められてしまうところが素晴らしい。
読書内容は行動に転化しないと意味がないと言われるが、『小さな習慣』に書かれている内容は行動に移さない方が難しいくらいだ。
確実に読んだ人の人生を変えてくれる内容だと思う。
【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・メンタリストDaiGoさん
→腕立て1回から始める「いい習慣を量産する技術」
※概要欄で紹介されています。
書名:小さな習慣
著者:スティーヴン・ガイズ
訳者:田口 未和
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2017年4月27日
価格:1,540円
はじめに
第1章 小さな習慣とは何か?
第2章 脳を味方にする効果的な方法
第3章 モチベーションとわずかな意志の力
第4章 小さな習慣を成功させるための心構え
第5章 小さな習慣はなぜ優れているのか
第6章 大きな変化をもたらす「小さな習慣」8つのステップ
第7章 「小さな習慣」を失敗させない8つのルール
この本の終わりに
読書ノート
『小さな習慣』を読む目的
自分には長年治したいと思っている悪習慣があるので何とかして治したいと思った。
その悪習慣とは、夜更かしによる生活リズムの乱れ、だ。
私は夜型の体質ではあるのだが、それでも午前中の方が生産性の高い行動ができていることが多い。
逆に、夕食後や入浴後は明らかに生産性が落ちる。
じゃあ、朝方じゃないの?
と思われそうだが、午前中は例外なく食欲がないのでおそらく朝型ではない。
人生の生産性を高めるべく、早寝早起き、少なくとも日付が変わる前には就寝したい、という願望を学生時代から持っているのに一向に改善しない。
本格的な読書を始めて習慣に関する本はすでに2冊読んでいたが、ほとんど効果がなかった。
その2冊とは以下の本だ。
3冊目の本書『小さな習慣』でようやく自分に合う効果的な習慣形成術の本に出会うことができた。
おそらく、私だけでなく本気で良習慣を身に付けようと思っている人はこの『小さな習慣』を参考にした方がいい。
後述するが、『小さな習慣』と上記2冊は書いてある知識については大きく違わないものの、フォーカスしているポイントが全く違う。
『小さな習慣』を読んだ感想
『小さな習慣』で最も重要なポイント
おすすめのポイントでも言及した通り、本書は
ということを一貫してメインテーマにしている。
具体例として腕立て伏せを1回行うということが何度も述べられている。
なぜ、極限まで小さい行動を設定するのかというと、小さすぎてやらない方が難しくなるからだ。
腕立て伏せ1回ができない、なんてことは腕を骨折したというような特殊な状況じゃない限り100%実行できる。
40度の高熱が出ていて死にそうになっていたって腕立て伏せ1回ならできるだろう。
着手のしやすさと、それによる継続のしやすさが習慣形成には最重要ということなのだ。
習慣とは無意識に行っている行動であり、そこには意志の力や感情、モチベーションが関わる余地がない。
無意識に行動を行うためには、その行動を一定期間継続することで脳に慣れさせる必要がある。
だからこそ、習慣形成期は、その行動による効果を期待するのではなく、嫌でも続けられてしまうシステムが必要になるというわけだ。
小さすぎて失敗しようがないほど行動を分解するというのは、嫌でも着手し継続するという観点からこれ以上ない方法論だと思う。
「ばかばかしいほど小さい」の意味
おそらく、「習慣をばかばかしいほど小さくしろ」と言うと、そんなことは分かっていると思う人もいるだろう。
しかし、身に付けようとしている習慣を小さくする、すなわち、極限まで分解するというのは思ったほど単純な事ではない。
私自身の例を挙げる。
まず私が本書で感動したのは、以下の記述だ。
選んだ習慣を“ばかばかしいほど小さく”する
引用元:134p
この言葉を読んだときに雷に打たれたような衝撃があった。
なぜなら、私の分解ではまるで足りていなかったからだ。
私が夜更かしを治し規則正しい生活をしたくて本書を読んだことはすでに述べた。
就寝・起床時間を決めて実行する、ということを何年も前から繰り返しているが全く機能しない。
そこで、時間を目標にするのを諦め、入浴時間を早くすることにしようと考えた。
入浴した後は寝るだけの状態になっているので、早い時間に入浴すれば必然的に就寝時間は早まる。
他方、いつまでも入浴しないと夜が更けるにつれ風呂に入るのが億劫になり就寝時間が遅くなる傾向があったのだ。
私は夕食後に1分間ほど身の回りの掃除や整理整頓をする習慣がある。
ある習慣に付随して別の習慣を身に付けるのは習慣術の王道の技術と言っていい。
if-thenプランニングなどと言ったりもする。
早期の入浴を身に付けるべく、以下の目標を設定した。
夕食後の掃除直後に入浴する
これが全然ダメダメな習慣設定だと思い知らされたのだ。
なぜかというと、一人暮らしをしているわけではないので、入りたいときに風呂に入れる保証はない。
上記の設定では、自分が風呂に入ろうと思ったときに誰かが風呂に入っていたらあっさりアウトだ。
実際に自分が風呂に入ろうと思ったらすでに誰かが入っていたことは何度もあった。
そう考えると行動をさらに分解する必要がある。
私は入浴とセットで歯を磨く習慣があった。
湯船につかりながら磨くときもあれば脱衣所の洗面台で磨くときもある。
いずれにせよ、風呂と歯磨きをセットにしていたのだ。
しかも、15分以上歯を磨いているため時間の長さで言えば入浴そのものよりも歯磨きの方がメインだ。
風呂に入るのが億劫になるのも歯磨きの方が原因と言っていいだろう。
そこで、入浴ではなく歯磨きだけを目標にすることにした。
歯磨きであれば、我が家には複数個所に洗面台があるため、人が使っているからできないということはない。
つまり、再設定した目標はこうだ。
夕食後の掃除直後に歯磨きをする
私はすぐに歯磨き用具をもう一式用意し、常備していある風呂の脱衣所のものに加えて、自室にも置いておくようにした。
人が風呂に入っていても、脱衣所に歯磨き用具を取りに行けないわけではないが、やや心理的なハードルがある。
このハードルをゼロにしたかったのであえてもう一式用意することにした。
効果は翌日に現れた。
私が風呂に入ろうとしたら家族が入っていたため、入浴することができない。
いつもであれば、脱衣所に用具を取りに行くのを遠慮して歯も磨いていない。
しかし、自室にもう一式歯磨き用具を用意していたため、夕食後の掃除直後にすぐに歯磨きを行うことができた。
結果として、その後に入浴もすませたため、就寝時間も遅くならなかったというわけである。
これから何か新しい習慣を身に付けようと考えている人は、もっと小さく確実に実行できる行動に分解できないか真剣に考えてみてほしい。
他書との比較
私が以下の習慣本を読んでいることは前述した。
これらの本も習慣形成では有名だが、大問題があるので説明する。
繰り返す通り、本書『小さな習慣は』は身に付けたい習慣を極限まで小さくすることを一貫したテーマとしている。
他方、上記2冊のメインテーマはif-thenプランニングと呼ばれる手法だ。
簡単に言うと、
AをしたらBをする、というもの。
例)歯を磨いたらスクワットをする
人間はきっかけがあると行動する確率が跳ね上がる生き物だ。
この本能を利用して習慣を身に付けようとする手法をif-thenプランニングという。
『習慣超大全』にはif-thenプランニングという言葉は出てこないが、帯に「Aをしたら、Bをする」と書かれている。
『超習慣術』は目次に、「習慣化の帝王=if thenプランニング」と書かれている。
ちなみに、『小さな習慣』でも153ページの「行動開始の合図を決める」という項目でif-thenプランニングについて説明している。
つまり、3冊ともif-thenプランニングについて言及されている。
if-thenプランニング自体は効果的な手法であるため必ず使うべきだ。
実際に私も、夕食後の掃除直後に歯磨きをする、という形で使っている。
実は3冊とも技術レベルの知識については、似たようなことが網羅的に書かれている。
問題は、どの技術に焦点を当てているかだ。
if-thenプランニングは行動する確率は上がるのだが、習慣形成においてこの確率という考え方は大問題だ。
なぜなら、習慣形成期には目標とする行動は100%実行しないと効果が薄まってしまうからだ。
すなわち、確率の上昇をメインウエポンにしている時点で挫折を織り込んでいるようなものなのだ。
他方、習慣をばかばかしいほど小さくしている場合はそもそもif-thenプランニングのifの部分さえ不要だ。
やることが簡単すぎてきっかけなど無くても実行できてしまう。
『小さい習慣』でも162ページで「小さな習慣は、開始の合図がなくても大丈夫」とある。
たとえば、本書で何度も書かれている腕立て伏せ1回なんて、この記事を書くのを中断してたった今すぐ行うこともできる。
何の心理的負担もなく、だ。
習慣を小さくすることと、if-thenプランニングでは重要度が全く違う。
習慣を小さくする>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>if-thenプランニング
さらに言うと、『小さな習慣』が習慣を小さくすることを中心に、この技術をどう生かすかについて書かれているのに対し、上記2冊はあらゆる手法が並列的に書かれている。
つまり、結局どの手法が本当に効果的なのかが分かりにくいのだ。
if-thenプランニングを最重要視しているとしても、習慣を小さくすることには全く及んでいないので間違っていると言っていいと思う。
習慣形成は、無理なくいつでも着手できる小さいものに行動を分解できた時点でほとんど達成が約束されている。
習慣を限りなく小さいものにするという最重要要素について徹底的に解説されている点に『小さな習慣』の価値がある。
『小さな習慣』の悪評に対する反論
私はこの『小さな習慣』を読んで大変感銘を受けたが、本書に対して批判があることも承知している。
そこで、各批判に対して反論しておきたい。
【批判1】
同じ内容が繰り返されている。
【反論1】
確かに、筆者自身の一日50ワード文章を書くといった話や腕立て伏せ1回の話が何度も出てくる。
しかし、全体にわたって新知識が出てくるのでよく読めば単なる繰り返しではないことが分かるはずだ。
新知識の例
・意志の力とモチベーションとの関係
・コンフォートゾーンとの関係
・自己肯定感との関係
・一度に習慣化できる行動の数について
・if-thenプランニングとの関係
・習慣の管理としてPCのようなデジタル機器ではなく手書きの方が良いこと
・大きめのカレンダーに印を付ける管理方法
・目標のレベルを決して上げてはいけないこと
他にも有益だと思った知識はたくさんある。
同じ内容が繰り返されていると思った人は本書をよく読んでいないか、読解力がないだけだろう。
本気で習慣を身に付けたいと思っていれば参考になる情報がたくさんあることに気づけるはずだ。
【批判2】
小さすぎる習慣では効果が感じられないので意味がないのではないか?
【反論2】
以下の2つの観点から反論できる。
①については野球のイチロー選手の名言がある。
小さすぎて意味がないように感じるという不安は分からないでもないが、そのレベルを経由しない限り大きいことなどできるはずもない。
人生に一発逆転のようなものがあると勘違いしているのならばそれは本書の問題ではない。
②について、これは実際に小さな目標を実行してみると体感できる。
実際に行動を始めると当初思っていたよりも多くのことを行うものなのだ。
私の場合も、夕食後に1分だけ掃除すると決めているが、1分で終わったことなどない。
長いと30分くらいやっていたりする。
行動を小さくする目的は、着手の心理的負担を限りなくゼロにして継続できるようにすることにある。
習慣形成期には効果については考えない方がいいし、心配しなくても行動しさえすれば思った以上の効果が出る。
『小さな習慣』の不満点
良いことばかり書いてきたが、不満もある。
と言っても些細なことだ。
本書の最後に、「もっと知りたい方は」という項目で、著者自身のサイトや商材についての誘導が行われている。
せっかく内容のいい本なのに薄っぺらい情報商材のような終わり方になってしまっているのはかなり不満だ。
明らかに本書のイメージを落としている。
翻訳者の方も、削ってくれればいいのに。
どうせ海外のサイトなんだから。
まあ、私個人は本の内容自体には全く不満は感じなかったということでもあるのだが。
まとめ
これまで自分を変える方法が書かれている本としては、環境を変えることを推奨する『スイッチ! 「変われない」を変える方法 』(チップ・ハース著/早川書房)を決定版のように考えていた。
しかし、本書『小さな習慣』の方が間違いなく効果的だ。
自分を変えたいと考えている人には2023年9月現在において最もおすすめできる書籍と言える。