おすすめのポイントと基本情報
【おすすめ度】
★★☆☆☆(2/5)
【おすすめのポイント】
本書は、仕事などをやめることに罪悪感を感じている人に対し、やめることも有効な選択肢の一つであることを繰り返し述べている。
ただし、帯でほのめかされているやめるか続けるかの判断基準や科学的に正しいやめ方といった技術的なことはほとんど書かれていない。
つまり本書はもっぱら、やめることは悪いことだと思い込んでいる人が対象になっている。
したがって、やめることを悪いことだと思い込んでいる人には一応おすすめできる。
やめることは選択肢の一つであることを前提に技術的な考え方を知りたい人にははっきり言って向いていない。
やめることを戦略的に考えたい人に対しては、為末大さんの『諦める力』の方がはるかにおすすめできる。
【おすすめしている人】※リンク先はYouTube
・メンタリストDaiGoさん
→お盆に読めば人生変わる名著TOP10➡︎Dラボではさらに役立つ本を紹介
書名:QUITTING やめる力 最良の人生戦略
著者:ジュリア・ケラー
訳者:児島 修
出版社:日本経済新聞出版
発売日:2023年5月18日
価格:1,980円
プロローグ
第1部 やめられない――それは、ただの思い込み
第1章 鳥、ミツバチ、五輪選手が教えてくれる「あきらめ」の正体
第2章 「もう無理!」を神経科学で読み解く
第3章 ジェニファー・アニストン、仕事をやめる――「やめること」はメディアでどう描かれてきたのか
第2部 なぜ 「Quitting(やめること)」は悪い言葉になったのか
第4章 忍耐は、なぜ重視されるようになったのか
第5章 運と手放すことーー物事はたまたま起こる
第6章 世界をより良くするために「やめる」
第3部 「あきらめる」実践ガイド
第7章 半ヤメ(セミ・クイット)――一時停止とピボット
第8章 「仕事で成功するための道のり」を手放す
第9章 やめることの罪悪感――大切な人をがっかりさせたらどうしよう?
第10章 SNS依存をやめる
第11章 やめる人たちのコミュニティ
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
原註
読書ノート
『QUITTING』を読む目的
①やめることの効果を知る。
②やめるか続けるかの判断基準を知る。
③①②の結果、やめた方がいいことをやめる。
自分が取り組んでいることの中にはやめて別の事をやった方がいいと思えるようなことが多々ある。
苦痛な仕事、成果の出ない副業、意味があるのか分からない勉強、など。
もっとも、成果が出るには時間がかかる場合もあるし、安易にやめてしまうと状況が悪化する可能性もある。
そこで、やめることが人生に与える効果とやめるか続けるかの判断基準を知ることで、やめた方が利益の大きいと思われることをやめられるようになりたいと考えた。
『QUITTING』を読んだ感想
はっきり言って、おすすめのポイントに書いた通り、ほとんど得るものはなかった。
本書は一貫して、やめることは悪いことではないですよ、と言っているだけだからだ。
本書の帯には、
・最良の人生戦略
・最新科学から解き明かす「やめどき」
・科学的に正しく「やめた」人ほど前向きに人生を切り開ける。
・続けるか、やめるか
などと書かれているため、科学的なやめ方が書いてあると思うだろう。
しかし、書かれているのは一貫して、やめることに罪悪感を持つ必要はない、ということだけなのだ。
より具体的に言えば、前半はやめることがなぜ悪いことではないのかを、鳥や昆虫を例に出して科学的に説明している。
中盤以降はひたすら、ジェニファーは~、ポールは~、といった海外の自己啓発本にありがちな個別エピソードのオンパレードで、抽象的な戦略はほとんど出てこない。
我々は人間なので鳥や昆虫の事例を出されてもあまり参考にならない。
個別エピソードは技術的な内容ではなく、やめた結果上手くいった事例を載せているだけなので、そこからどのような教訓が得られるのかが分かりにくい。
つまり、読者が自分のケースにどのように応用できるかの参考にならないのだ。
一応、半やめ(セミ・クイット)といった技術論についても書かれているが、数は少ない上に個別エピソードが中心なので、自分に応用できるかは自分で判断するしかない。
本音を言ってしまえばかなり期待外れの本だった。
私が目的としていた①~③は達成できていない。
それでも星を2つ付けたのは、やめることについて書かれている本が少ないからだ。
仕事や長年挑戦してきたことをやめることに罪悪感を持っている人は読んでも損はないだろう。
他のおすすめ本について
やめることについて戦略的に考えたい人にはおすすめのポイントでも挙げた通り、
為末大さんの『諦める力』の方がはるかに参考になる。
文庫版と単行本の2種類ある。
私は単行本で読んだが、文庫版には追加の文章もあるので文庫版の方がお得だろう。
諦めて別のことをやることを戦略的な攻めの決断として論じているため、『QUITTING』よりも先を行っている。
やめる際の判断基準についても言及されている。
やめることに感情的な抵抗はないが損得の観点から判断がつかない、という人は『QUITTING』より『諦める力』を読みましょう。